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 こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。

 私の住む福島では、猛暑は足早に過ぎ去り、もう涼しくなってきました。考えてみればセミの声もそれほどうるさいと感じることはありませんでしたね。みちのくの夏はやっぱり少し短いのかな、と感じます。昨年は灼熱(しゃくねつ)の京都で過ごしたので、その落差で勘違いしているのかもしれませんが。

 さて、今回も前回までに引き続き2019年6月に出した著書「がん外科医の本音」から、日経ビジネス電子版読者の皆様の関心が特に高そうな「がん検診」の項から引用してお届けします。

 ここを書くにあたり、私は非常に多くの論文と医療ガイドラインを読み情報をあらためて精査し、市販のがん検診について書かれた本10冊以上に目を通すことで今世に流布している意見を把握しました。さらには、京都大学大学院医学研究科の健康情報学の教授に意見を仰ぎ、ディスカッションをした上で監修をしていただき、医学的な信頼性を担保しました。そこに、がんを専門とするいち医師である私の意見を付記しています。

 非常に苦心して書きましたが、これほど情報を俯瞰(ふかん)し、さらに複数の専門家の見解をもとにまとめたものは他にないと自負しています。

 それではどうぞ。

検診はすればするほどよいわけではない

 誤解のある人が多いのですが、がん検診にはメリットとデメリットのどちらもあります。「検査をすればするほど、病気がちゃんと見つかっていいのではないか」「若い人全員にもしたほうがいいのではないか」と考えている方もいらっしゃるでしょう。実は、どちらも答えはNOです。

 今回、皆さんにお伝えしたい最も大切なこと。それは、検診を受けるべきかどうかを決めるには「メリットとデメリットをてんびんにかけた結果、どちらが上回っているか」を考えなければならない、ということなのです。

 そして、このてんびんにかけた結果は、「人によって答えが異なる」という点が極めて重要です。それはつまり、人それぞれの価値観によって結論が真逆になる可能性が十分にあるということを意味します。ですから、ここではまずメリットとデメリットを説明し、最後に私の価値観で考えた結果を本音でお話しすることにいたしましょう。

(写真=RUN STUDIO/a.collectionRF/amanaimages)