副作用として知られる「はきけ」はある?
さらにあまり知られていないことですが、副作用はだいぶマシなものになってきました。抗がん剤の副作用と言われるとどんなものを思いつくでしょうか?
- はきけ・嘔吐(おうと)
- 下痢
- だるさ
- 毛が抜ける
- 手足のしびれ
この中でもっとも「抗がん剤副作用」のイメージとして定着しているのが「はきけ」と「毛が抜ける」でしょう。
私は外科医ですが、大腸がんの患者さんの抗がん剤治療も専門的に行っています。その経験からまず申し上げたいのは、「はきけ」はかなりの人がほとんどゼロか、その日だけ少し感じる程度に緩和されてきたということ。かなり驚かれるのですが、はきけ止めの薬が非常に進歩したことによります。看護師さんにも確認をとるようにしていますが、ひどいはきけを訴える人はほとんどいなくなりました。
現代の医学で克服できていない副作用も……
では「毛が抜ける」についてはどうでしょうか。
よく知られているのは、乳がんの患者さんが多く使う抗がん剤の副作用です。乳がんは若い女性がかかることもあって、髪の毛が抜けることは精神的苦痛を伴い、非常に重大な副作用といえるでしょう。
いまのところ医学は毛が抜けるという副作用を克服できていません。いくら抗がん剤が終わってから3カ月程度で再び生えてくるとはいえ、治療から1~2年はウィッグ(かつら)や帽子をつけている人が多いのです。
アイドルグループSKE48に以前所属していた、矢方美紀(やかた・みき)さんという方がいます。彼女は18年、25歳で乳がんにかかり、その後手術、抗がん剤治療、ホルモン療法を受けています。彼女は抗がん剤治療でやはり髪の毛が抜けてしまい、ウィッグをつけながら芸能活動を続けていました。がんの啓発イベントで一度ご一緒したことがありましたが、そのときもウィッグをつけておられました。とてもキュートな方で、「ウィッグはかゆいし、暑い」とおっしゃっていました。
なお、彼女はNHKのウェブサイトで「乳がんダイアリー」というページを持っており、とても細かく治療や副作用のことを動画でお話しされています。2~3日に1度のペースで更新し、とてもリアルなお話をされています。その勇気に感服するとともに、皆さんも見てくださるようおすすめします。
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