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 こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。福島に戻りはや2カ月が過ぎ、日々是緊急手術の毎日を送っています。ほぼ週に2~3件は緊急手術をやっていると、だんだん「あれ? 今日は来ないのかな?」とさえ思うようになりました。ないに越したことはないのに、慣れって怖いですねえ。

 さて、今回から当連載「一介の外科医 日々是絶筆」では、がんにまつわる私の本音シリーズをお伝えしたいと思います。2019年6月6日、『がん外科医の本音』という書籍を刊行することになりまして、その中からとっておきの内容を厳選して転載いたします。

 これは、昨年夏に出版した13万部超えの『医者の本音』の続編として書いたものです。続編とはいえ、内容はずばり「がん」に絞っています。私は大腸癌の専門家ですので、その立場から広くがんにまつわる誤解、本音を記しました。

 昨年1年間、住んでいた京都で、3月にこの本を著しました。学生だったので時間があるつもりでしたが、それでもかなりの時間を割いての執筆となりました。そして出版社の編集者の方も前作のときより心なしか厳しくなり、章によっては半分削られて書き直しをすることも。

 さらにはがんの研究者お二人による全体監修と、京都大学の教授で医師でもある先生の部分監修で、私の思い込みや偏りを排除しました。

 テーマ設定は編集者さんと私でやりましたが、非常に書きづらいものばかり。それでも、できる限りギリギリまで誠実に、真正面からテーマに取り組みました。

 それでは第1回、どうぞ御覧ください。

ズバリ、外科医は「切りたがる」

 世の中では、がんについて数多くのうわさがまことしやかにささやかれています。その一つに「医者はがんを切りたがる」というものがあります。まるで医者が、個人の趣味のように治療に当たっている印象を与えます。医者はがんを切りたがるか。答えとしては、「切りたがる」と答えましょう。なぜでしょうか。外科医として、理由をお話しします。

(写真=アフロ)

 まず、がんが切れるかどうかは、外科医の技術ではなく、「がんの種類」と「そのがんがどれだけ進行しているか」によるのです。「がんが切れる」という言葉をもう少していねいに言うと、「がんを残すことなく取り切れる」とイコールになるのです。

 昔は違うこともありましたが、現在は、どこの病院のどの医者にかかっても、「切るかどうか」はほとんど同じです。言い換えれば、がんの治療方針はどこでも同じなのです。