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DNAの一致をどう見るか

 そして2の「患者さんの乳房から被告のDNAに一致したものが検出」について。

 こちらは、検察によると乳房からアミラーゼ(唾液の成分です)が検出され、さらにそのDNAを調べると被告外科医のDNAと一致するDNAが出た、とされています。

 言い換えるならば、被害女性の乳房から被告外科医のDNAが検出され、さらに唾液の証拠であるアミラーゼも出ている。つまり、舐めたのだろう、という論理の展開が検察により主張されたのです。

 ふむふむなるほど、まあそうかもなあ、と私は思っていました。被告人の利益に立てば、残る可能性は、

・喋っているうちに唾液が飛んで乳房についた可能性
・検査自体の信頼性への疑義(捏造や間違いなど)

 ということになります。

医師の視点からすると……

 1点目は、乳腺の手術に限らずどんな手術でも、麻酔前や麻酔後の執刀前の僅かな時間に外科医同士で患者さんの裸の上で触りながらしゃべることは一般的です。「ここを切って、こんな風に手術を進めよう」などと話すのですね。

 特に乳腺腫瘍の場合は、外科医2人などで実際に患者さんの乳房を触りながら「この大きさならこのくらいの切開でいいのでは」などと話すことは多いと思います。あまり良くないのですが、マスクを外したまましゃべる外科医も少なくなく、その時に唾液が飛んで付着したとしても不思議ではないな、というのが正直な感想です。また、グリグリ触るので皮膚が少し脱落して乳房に付着することも自然なように思います。

 このことは、実際に判決文でも認められています。「(筆者補足:わいせつ行為以外の)他の機会に、触診により被告人のDNAがAの左乳首付近に付着する可能性、唾液の飛沫により被告人の唾液及びDNAがAの左乳首付近に付着する可能性があるということになる」と(m3.comの「DNAが被害女性の左乳首付近に付着する可能性-乳腺外科医裁判判決文の詳報◆Vol.5」より。なお記事を読むには会員登録が必要です)。