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11時間にもわたる大手術

 さて、本題です。堀ちえみさんが舌癌にかかったとご自身のブログで発表されました。私としては、病気を診断されたこと、そしてご発表されたことで非常に大きなストレスが堀ちえみさんにかかっているのだろうと拝察いたします。おそらくご本人の所へは多数の取材依頼、そして知人からの「これで癌が治る」という不思議なオススメが殺到していることと思います。

 あまり知られていませんが、ひとたび癌にかかると、民間療法や「金の棒でこする」など独自の治療を薦めてくる人が必ずいます。知人の癌経験者・闘病中の方はほぼ必ずそんな経験を持っています。こういうものを断るストレスもあります。

 そして、2月22日に手術をなさったとブログにありました。引用します。

 「先ず頸部リンパ節を取る手術を行い、次に舌の6割を切除する手術を行いました。そして最後に太腿の組織を取り、舌の再建手術です。11時間にわたる大手術でした」

 私は消化器外科の専門医でして、舌癌の手術は主に口腔外科医・頭頸部外科が行います。切除と再建で執刀チームはチェンジしますから、外科医の感覚としては6時間程度の手術というものはそれほど長いわけではありません。が、患者さんにとっては超長時間ですね。本当にお疲れさまでした。待っていたご家族も、気が気でない11時間は本当に疲れたことと思います。

 ブログによると、術後はICU(集中治療室)でしばらく過ごすとのこと。いまが精神的・身体的ストレスのピークかと思います。とても頑張っていらっしゃると思いますが、頑張っていただきたいと存じます。ご家族も、看病疲れで倒れてしまうことがあります。病院って、慣れない人(ほとんどの人は慣れませんよね)にはすごく疲れますので、看病もご無理なさらず。病院には医師・看護師・いろいろなスタッフがいて、みんなで患者さんのことをみています。1日位サボったっていいんですからね。

舌癌の患者さんが多いスリランカ

 舌癌について、「初めて聞いた」という読者の方も多いと思います。事実、舌癌はかなりまれな癌の一つです。舌癌は口腔癌(こうくうがん)というカテゴリに含まれており、ここには舌癌のほかに歯肉癌、頬粘膜癌などが含まれます。この口腔癌は、ガイドラインによると本邦では「2005 年における口腔癌の罹患数は約6900 人であり、全癌の約1%を占めると推定される」(「口腔癌診療ガイドライン」 より)とあります。癌にかかった人のうち、100人に1人しかいないのです。それではあまり聞いたことがありませんね。

 しかし、人間の身体の中で、癌ができない部分はほとんどないと言っていいほど、あらゆる場所に癌は発生します。皮膚にも、肛門にも、性器にも、爪にも、目にも、脳にも、です。唯一と言っていいほどほとんど発生しない部位、それは心臓です。理由はさまざま言われていますが、はっきりしていません。とにかく心臓に悪性腫瘍は発生しづらく、唯一、粘液腫という良性腫瘍がしばしば発生するくらいです。

 舌癌に話を戻しますが、この病気はスリランカなど南アジアの国では多いとされています。理由は、「噛みタバコ」だと言われています(岐阜大学大学院の解説ページより)。

 また、似たものでかぎタバコがあり、こちらは現在日本でもJTから「ゼロスタイル・ミント」として販売されています。申し訳程度にパッケージには警告がありますが、口腔癌の発生の原因となる可能性があるため注意が必要です。というより、癌を避けたいのなら、どんな種類であれタバコをやめることはなによりの第⼀歩ですけどね。