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 みなさんこんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。

 さて、堀ちえみさんが舌癌(ぜつがん)にかかったという報道がありました。手術も先日、11時間かけて終わったとのこと。本当にお疲れさまでした。今回の「日々是絶筆」では、堀ちえみさんにエールを送るとともに、あまり聞き慣れない「舌癌」について解説したいと思います。

 なお、本記事には堀ちえみさんの病状や予後の推測などは含まれておりません。すみませんが、そういった予測の取材などは一切お断りしております。と書かないと、ゴシップ系のテレビ・週刊誌の取材依頼が毎度必ず来ますので。

 まずはちょっと近況を。わたくし現在外科医稼業を一時お休みし、福島から京都へ移住して京都大学の大学院生をやっております。ずいぶんたくさんの講義を受けたのですが、2月の頭でほぼ講義は終わりました。さあ、やっと研究に執筆にゆっくり没頭できるな。そう思っていた矢先、なんと胃を悪くしてしまいました。結論から申せば、急性胃粘膜病変(AGML)という病気になってしまったのです。

医者の不養生

 あまり知られていない病名ですが、簡単に言えばストレスなどで胃がひどく荒れてしまった状態のこと。胃潰瘍などと同じく良性なので、もちろん数日で治りますが、これがまたとんでもなく痛かったのです。

 胃が痛かったのは実は1月から。暴飲暴食に加え、2月はじめの初の小説刊行でストレスがかかっていたのでしょう。当初は1日のうち5~6回、上腹部がぐっと痛んでいたのが、そのうち5分に1回のペースで痛みが来るようになりました。

 やれやれ、陣痛みたいだな……と思っていたら、ついにある日、一晩中、痛くて全く眠れないほどに。朝を待ち、消化器内科医の知人に連絡してなんとか病院にたどり着き、胃カメラをやってもらいました。するとこんな所見。

ピンクの部分が正常、白い部分がダメージを負ったところです。これ、けっこう専門家がみても「ひどいねー!」と漏らすような所見なのです

 汚い写真で申し訳ありません。白い部分が「糜爛(びらん)」といって、粘膜が傷んでいるのです。例えば、コンクリートでスライディングした擦り傷が胃の半分に広がっているような、そんな所見でした。やれやれです。医者の不養生でした。

 幸いタケキャブという胃薬を飲んで、数日は食事を止め、徐々におかゆから普通食に戻したところ、良くなりました。ありがとう、武田薬品工業。しかし武田の薬って、「タケプロン」とか「タケキャブ」とか自社愛強めですよね。ま、医者としても覚えやすくていいのですが。

 胃カメラから10日ほど、やっと良くなったと思ったところで今度はノロウイルスです。やってしまいました。私、消化器外科専門医というタイトルを持っており、一応胃と腸の専門家なのですが、見事にどちらもやられるという。しかも専門医だからといって、早く発見するとか、なにか特別な治療で早く治るなどということはないのです。悲しいことですね。

 ちょっと働き方を考え直そうかな、そう思った胃と腸の事件でした。皆様は十分にお気をつけくださいね。健康がなくなると仕事も家庭もなにもなくなりますから。