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 こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。

 年が明け、2019年となりました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。この連載「一介の外科医 日々是絶筆」は日経ビジネス電子版の「オンラインゼミナール」上へお引っ越しをし、続けさせていただきます。少し珍しい「医師・作家」という立場からの、医療時事問題や現代医療についての論説を載せていく予定です。

 さて、まずは少し近況から。私はいま外科医を1年限定で一旦お休みし、京都大学の公衆衛生大学院で勉強しております。初めて住む関西、それも古都・京都を楽しもうと、年越しは神奈川の実家には帰らず京都で過ごすことといたしました。ところ変われば正月も変わるもので、まず私が驚いたのはお餅の形。関西は丸い餅があるのですね。私は直方体の切り餅しか見たことがありませんでした。

 年越しはのんびりと紅白でも……と思ったのですが、そういえば私の借りている築78年の家は地上波アンテナがなく、「NHK紅白歌合戦」が見られないという悲しさ。「ゆく年くる年」も見ないのは調子狂うなあ、などと思いつつ、静かな年越しをしました。

 そして年始は初詣のために祇園の八坂神社へ。想像通りのとんでもない人出で、多くの外国人観光客の方々が来ていました。たくさんの出店も出ていまして、今思うと600円のイカ焼きなど高価なものをたくさん食べてしまいました。なぜなのでしょうね、出店で食べると美味しいのは。

 なんにせよ、去年は緊急手術ばかりの年越しでしたので、今年はのんびりできました。また来年から盆も暮れもなく忙しいのだな、と思うと恐ろしいのですが、勤務医ですから仕方ありません。

医師は生かさず殺さず?

 というところで、今回は「医師の過労」という問題を取り上げます。NHKのニュースや新聞各紙の一面でも「残業2000時間」と報じられましたので、ご存知の方も多いかと思います。この問題は、読者の皆様には直接すぐのメリットはないかもしれません。が、いずれ「病院を受診するのにも3日待ち」や「がんの手術を半年待ち」のような影響が出るほどのインパクトがあります。医療崩壊という言葉が見え隠れしていますので、ぜひ一緒に考えていただけければ幸いです。いかに異常な議論をしているかを解説し、この問題の本質を考えます。

 この「残業2000時間」報道は、正確には「特定の医療機関に勤める医師では1年の残業時間の上限を2000時間とする」です。この案が先日、厚生労働省で開かれた「第16回 医師の働き方改革に関する検討会」で出され、大きく報道されたのです。この検討会は2017年8月に始まったもので、医者の働き方についての議論がされています。医師や看護師、法律の専門家や厚生労働省の人などから構成されていて、メンバーには私の知っている人も3人います。

 医師の労働時間はその他の職種と違い、あまり厳しく規制するわけにはいきません。なぜなら、もともと少ないマンパワーで維持している地方医療が崩壊してしまうからです。かといって、野放しもいけません。医者の過労死は続いています。では、地方医療を崩壊させず医師を過労死もさせず、生かさず殺さず一番いい落とし所はどこだろう。そんなニュアンスでこの検討会の議論は進んでいきました。

(写真=PIXTA)