(写真:ロイター)
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 ドイツのショルツ首相が訪中し、11月4日は習近平国家主席との中独首脳会談が行われた。中国の要請を受けてのものであり、西側諸国による対中包囲網に風穴を開けようとする中国の狙いは明らかだ。そしてドイツの対応を受けて、「日本もうかうかしていてはいけない」と、中国ビジネスを重視する日本の産業界が揺さぶられている。しかし表面的な動きではなく、その内実をよくよく見る必要がある。

「ドイツは対中融和」と即断は禁物

 今回の訪中には政権内でも強い反対が多かった。にもかかわらず、ショルツ首相が首相府長官など一部の社会民主党の取り巻きだけで決断したようだ。反対したのは対中強硬姿勢をとる緑の党のハベック経済・気候変動相やベアボック外相だけではない。穏健派のリントナー財務相も反対だったようだ。特に企業を引き連れての訪中であること、習氏による3期目体制のスタート直後というタイミングであることは中国の思惑通りになってしまうからだ。

 他方で、最近のドイツ外交は明らかに今回の訪中に相反する動きをしている。1日、シュタインマイヤー独大統領が来日して関係強化を図った。また日独の外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)を開催して、対中抑止力の強化を合意した。さらにドイツは主要7カ国(G7)の議長国として、外相会議では覇権主義的な動きを強める中国も議題にして、台湾問題や新疆(しんきょう)ウイグル自治区の人権侵害への懸念も表明した。

 9月のG7貿易相会合の共同声明でも、中国による経済的威圧に対してG7が協力・連携して取り組むことを盛り込んだ。驚くことにこれはドイツが主導したものだ。

 ショルツ首相の訪中だけを見て、ドイツは対中融和に舵(かじ)を切ったと見るのは明らかに一面的で短絡的すぎる。

 今回の訪中に対する批判はドイツ国内からだけではない。欧州連合(EU)が対中依存度を下げる方針を掲げている中で、今回のドイツの対応を苦々しく見ている。中国による分断、揺さぶりの意図が明らかなだけに、「よりによってこの時期に」と、タイミングの悪さを指摘する向きが多い。米国もバイデン大統領がショルツ首相との電話会談で、くぎを刺している。バイデン政権内からはドイツに対する厳しい声も聞こえてくる。

 ドイツは今回の訪中で内外からの批判を避けるために必死になっているのがありありだ。訪中といっても中国滞在はわずか11時間で宿泊もしなかった。表向きはロシア核問題への共同歩調を中国から引き出したことを成果として誇示する。また新疆ウイグル自治区における人権問題や台湾問題を取り上げて注文を付けたことをアピールしている。

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