半導体の日米協力の全体像を見る

 まず、各メディアの見出しを飾っているのが、半導体の日米協力だ。次世代半導体の共同研究などサプライチェーン強化で合意した。先端半導体の生産は台湾が圧倒的なシェアを占め、台湾有事になればその影響は深刻だ。

 これは昨年11月に萩生田経産相とレモンド長官が合意して事務レベルでの協議を続け、今年5月には次世代半導体の日米協力の強化を合意している。

 その一つが、萩生田経産相が表明した、次世代半導体の共同開発を目的とした研究開発拠点の新設だ。回路幅が2ナノクラス(ビヨンド2ナノ)の次世代半導体の研究開発に取り組む。年内に大学や研究機関が参加する新組織を立ち上げる予定だ。

 後で述べるように、米国も半導体の研究開発に巨額の予算を投じる予定だ。そうすると米国の予算で行う研究開発と日本の予算で行う研究開発の役割分担が必要になってくる。次世代の半導体の開発については前述のビヨンド2ナノの他に、後工程の先進的なパッケージングなど日本企業の協力が不可欠な分野もある。さらにこうしたロジック半導体だけでなく、メモリー半導体、パワー半導体など多様だ。こうした全体像を見渡して、相互補完の役割分担も日米間で話し合われているだろう。

 萩生田経産相が表明した研究開発だけに目が行って報道するのはやむを得ないが、こうした次世代半導体の開発協力の全体像を見落としてはならない。

「次世代半導体の量産」は早計だ

 ここでもう一つ注意すべきは「量産」の言葉が躍っていることだ。見出しを「量産」としたり、「2025年にも国内で量産態勢を整える」としたりする報道さえある。しかしこれははっきり言って先走り過ぎだ。

 もちろん「量産に向けた共同研究」となっているが、量産を目指さない研究開発などない。しかし研究開発の拠点は日本にできても、量産するのも日本である保証はない。日本で研究開発する利点は装置メーカーや部材メーカーがそろっていて、その技術力を活用できることだ。

 しかし量産はまるで違う。半導体の巨大なユーザーが存在してこそ量産工場が成立する。そこがGAFAを抱える米国の強みで、日本の弱点なのだ。せっかくの開発の成果である量産を米国に持っていかれる可能性もないわけではない。NTT、トヨタ自動車をはじめユーザー側が今後、需要をつくれるかにかかっているのだ。

 さらに米国議会では半導体の生産、研究開発に527億ドル(約7兆円)の補助金を投じる法案が可決し、大統領の署名で成立する。今後5年間、390億ドルで米国での工場新設を後押しして、半導体の安定調達を目指す。日本とは一桁違う支援策で、日米どちらの磁力が強いか明らかだ。

 私は今年1月の拙稿「日米首脳会談、経済版2プラス2に込められた思惑を読み解く」で、こう指摘した。

 「米国は自国中心主義で、半導体などの『戦略産業の囲い込み』をしようとしている。日本が不用意に突っ込むと、日本からの一方的な産業・技術の持ち出しになりかねない。連携とは表面的には耳障りはいいが、実態を見極めて冷静に対応すべきだ」

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