日米両政府は7月29日、米ワシントンで外務・経済担当閣僚協議「経済版2プラス2」の初会合を開いた。日本は林芳正外務大臣と萩生田光一経済産業大臣、米国はブリンケン国務長官とレモンド商務長官が出席した。成果として、共同声明と4項目の行動計画を策定した。
中国、ロシアを念頭に日米が経済安全保障で連携して対抗していく重要なエンジンだ。率直に評価したい。

共同声明、行動計画の内容は日本政府のブリーフィングをもとに報道されている。これは当然のことながら、「お化粧」を施して見栄えをよくしたものだ。ここではできるだけ「素顔」を見ることにしよう。
透けて見える舞台裏
まず、「ルールに基づく国際経済秩序づくり」だが、これは日米陣営の“旗印”を明確にしただけだ。いろいろ項目が列挙されているが、実質的に中身があるのは2点、半導体の日米協力と輸出管理での日米連携だ。それぞれ後で詳しく説明しよう。
これらはいずれも5月に萩生田経産相が訪米してレモンド商務長官との会談で合意したものだ。今回、これをベースに成果として仕立てた。
しかしそれだけでは鳴り物入りでスタートした経済版2プラス2の格好がつかない。外務相もプレーヤーであるからには、経産省案件だけでなく他省庁の項目も必要だ。
質の高いインフラ投資、高速通信規格「5G」や海底ケーブルの整備、サイバーセキュリティー、食料安全保障と、どこかで聞いたことがある協力ダマが並ぶ。いずれもこれまで日米や日米豪印の枠組み「Quad(クアッド)」の首脳会談といった他のお座敷で合意されてきたものだ。新味はなく、中身も薄い。
経済版2プラス2に参加していない他省庁からすれば、本音は“お付き合い”にすぎない。それを外務省が何とか抱き起こしたのが舞台裏の実態だろう。
例えば、行動計画には半導体、蓄電池、レアアースなどの重要鉱物の供給強化策を盛り込んでいるが、医薬品の言及はない。バイデン政権がサプライチェーンの強化で挙げているのは医薬品も含めた4分野だ。日本も経済安全保障推進法におけるサプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化で、医薬品も対象としている。それにもかかわらず、今回合意した行動計画では言及されていないのもそうした背景だろう。
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