最近の経済安全保障を巡る論議を見ると、国会で成立した経済安保推進法に終始している。しかしそうした国内の論議をよそに、中国は国産化戦略を急速に加速させている。必要なのは先端技術の入手で、標的になるのが日本企業だ。日本企業は直面する深刻なリスクにこそ目を向けるべきだ。
それに対する備えは経済安保推進法には盛り込まれていないが、果たして大丈夫なのだろうか。
最近になって表面化した、複合機を巡る外資排除の動きもその一つだ。これは中核技術を入手することを狙ったものだ。
複合機・医療機器が国産化戦略の焦点に
中国の国産化戦略の脅威については、私はこれまでも警鐘を鳴らしてきた(2021年9月6日公開の「半導体に素材、EV部品…中国・国産化の標的は日本企業か?」、2022年4月8日公開の「ロシアの陰で日本企業に迫る中国の脅威 狙われる素材・部品・装置」)。

中国が国産化のボトルネックになっている技術の入手にまい進していること、外資企業の誘致と買収はそのための手段であること、国産優先の政府調達で外資企業を揺さぶることなどを指摘してきた。先端技術を有する外資企業を中国国内での生産に追い込み、それによって外資企業の有する先端技術の獲得を狙っている。対象として、パソコン、サーバー、プリンター、複合機などがリスト化されている。
中国は西側諸国によるロシアへのハイテク禁輸措置を、将来の台湾侵攻時の備えとして研究しているという。その結果、こうした動きは最近になってますますエスカレートし、より大胆になっている。
複合機について、中国国内での設計・開発・生産を要求するという動きもそうだ。政府調達だけでなく、新たな手段として「国家標準」まで持ち出してきた。複合機などの国家標準において、中核部品も含めて中国で設計・開発・生産をするよう求めるのだ。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り2651文字 / 全文3443文字
-
【春割】日経電子版セット2カ月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
【春割/2カ月無料】お申し込みで
人気コラム、特集記事…すべて読み放題
ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「細川昌彦の「深層・世界のパワーゲーム」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?