日本が韓国に対して輸出管理措置を発動して、7月でちょうど3年になった。韓国では尹錫悦(ユン・ソンニョル)新政権が発足し、戦後最悪とまでいわれる日韓関係の改善へ期待が高まっている。そのためには元徴用工問題をはじめとする日韓間の懸案解決が不可欠だ。その一つがこの輸出管理措置だ。今後の展開はどうなるのだろうか。

6月29日のNATO首脳会議における日米韓首脳の会談(写真=YONHAP NEWS/アフロ)
6月29日のNATO首脳会議における日米韓首脳の会談(写真=YONHAP NEWS/アフロ)

“空騒ぎ”に韓国が過剰反応

 簡単に措置の内容を振り返ってみよう。

 韓国への輸出の扱いで、半導体材料である「フッ化水素」「EUV用フォトレジスト(感光剤)」「フッ化ポリイミド」の3品目について、それまでは一度許可を得れば3年間は申請なしで輸出することができる「包括許可」から、契約ごとに審査・許可する「個別許可」に切り替えた。

 相手国の輸出管理が信頼できる国々に対しては簡便な手続きで輸出できる、通称「ホワイト国」という優遇措置があるが、韓国をこのホワイト国から除外した。理由は輸出先の韓国において3品目が行方不明になるなど、ずさんな管理による不適切事案が頻発したこと、さらには韓国が輸出管理当局同士の緊密な意見交換に応じてこなかったからだった。

 私は3年前の発動直後から、輸出管理への理解不足に基づく報道を厳しく指摘してきた。(参考記事:誤解だらけの「韓国に対する輸出規制発動」

 当時は「これは事実上の禁輸だ」とか、「輸出管理」ではなく「輸出規制」だと意図的に言い換える報道もあった。そして「韓国の半導体産業に大打撃」「個別許可で恣意的運用も」と大騒ぎだった。

 こうした日本の誤解に基づく報道を真に受けて韓国側も猛反発した。一連の日本側のゆがんだ報道は厳しく検証されるべきだろう。

 政治家の勇ましい余計な一言もあっただろうが、これは輸出管理への無理解からくるもので、私は当時から「個別許可になっても正常な取引は許可され深刻な影響を与えない。空騒ぎだ」と指摘してきた(関連記事:韓国の半導体産業、世界の供給網への影響も“空騒ぎ”

 理由はこうだ。個別許可になったところで、普通のまともな取引は許可される。輸出する企業が申請手続きに慣れてくるのは時間の問題だ。現にもともと個別許可になっている台湾をはじめ他のアジア諸国向け輸出は何ら支障が生じていない。また正常な個別許可が一定程度積み上がっていけば、問題ないことを確認できた輸出企業の取引に包括許可を認める制度もある。もちろん韓国向け以外でもこうした制度を活用している。淡々とこうした以前からある運用方針を踏まえれば、何の支障もない。

 蓋を開けてみると、現に韓国とのまともな取引に支障は出ていない。その結果、韓国の半導体輸出量を見ても何ら影響を与えていないのだ。

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