先進7カ国(G7)は首脳会議でロシア産原油の原則禁輸を合意してロシアへの圧力を強めた。「フェードアウト(段階的廃止)か禁止」というのは1カ月前に石炭の原則禁輸を合意した内容と同じだ。代替供給源の見つけやすさは石炭、石油、天然ガスの順で、禁輸の制裁のステップもその順だ。

 欧州連合(EU)は加盟国に原油の原則禁輸をすでに提案しており、日本もG7の結束を重視せざるを得ないとの判断だ。EUのロシア産石油への依存度37%に比べれば、日本のロシア産原油への依存度は3.6%と圧倒的に低い。

ウクライナのゼレンスキー大統領を招いたG7首脳のオンライン会合に臨む岸田首相(写真:共同通信)
ウクライナのゼレンスキー大統領を招いたG7首脳のオンライン会合に臨む岸田首相(写真:共同通信)

 しかしそもそもエネルギー自給率が12%と先進国では殊の外低く、原油のほぼ全量を輸入している日本にとっては厳しい選択だ。また歴史的に振り返ると、ロシア産原油の輸入はかつて石油危機を経験して中東依存から脱却するために供給源の多角化を目指した一環でもあるが、EUが禁輸に踏み切ればやむを得ない。

 共同声明では「代替供給源を確保するための時間を取る」として一定の猶予期間を認めてはいる。岸田文雄首相も「時間をかけてフェードアウトのステップをとっていく」としている。

 しかしこの穴埋めは決して容易ではない。増産余力のあるサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など中東産油国はロシアも参加する石油輸出国機構(OPEC)プラスの結束を優先して、増産には慎重だ。むしろ原油価格の高値維持を歓迎する。米国のシェールなどの増産も国内の環境派の影響力でままならない。備蓄の放出も一時的で、焼け石に水だ。要するに段階的廃止は穴埋めの見通し次第だ。

 ただし、後述するように制裁に参加しない中国、インドがロシア産原油を買い増せば、これらの国がそれまで購入していた中東産原油などが回ってくるといった、原油供給の“玉突き”も起こり得るだろう。

ロシアのエネルギー産業は三重苦

 ロシアのエネルギー産業は、既に生産、販売、輸送の3点で深刻な事態に陥っている。

 第1は、ロシア産原油は今後買いたたかれ続けるということだ。制裁に参加していない中国、インドの出方がポイントになる。西側諸国の制裁でロシア産原油は大幅に割安になっていて買うチャンスだ。国際指標の北海ブレント原油よりも3割程度安い価格で買いたたかれている。

 これらの国による購入増が西側諸国による制裁の“抜け道”になる要素もあるが、購入増にも限界がある。原油の品質の違いを見逃してはならない。ウラル産原油は硫黄分が多いため脱硫設備が必要なのだ。欧州ではオランダなどでその設備が完備されている。一方の中国、インドは設備面で引き取り量には限界が出てくるのだ。欧州の制裁による大量の減少分を補うのは難しいだろう。

 第2の問題は生産面だ。ロシアにとって深刻なのは、油田・ガス田の生産を維持するために必要な設備の補修部品が西側諸国による輸出規制で手に入らなくなっていることだ。メンテナンスができなくて生産力は確実に低下していくだろう。この西側諸国による広範なハイテク品目の禁輸はボディーブローのように効いてくる。

 日本も権益を持つ原油開発事業「サハリン1」では石油メジャーの米エクソンモービルが撤退を表明し、天然ガス開発事業「サハリン2」では英石油大手シェルが撤退を表明している。こうした石油メジャーはプロジェクトのオペレーターとしての技術・ノウハウを有している。それは中国の技術力では補うことは難しい。

 その結果、ロシアのエネルギー産業にとって大打撃で、足元では供給していても、今後先細りすることは必至だ。

 第3が輸送面でのネックだ。戦争被害に対応した船舶保険が大幅に値上がりしている。またEUの制裁案ではロシア産石油を輸送する船舶への保険提供禁止が盛り込まれている。かつてイラン産原油の輸送でも保険・再保険の提供が禁止されたのと同様だ。決定されればロシア産の石油輸出は輸送面で積み荷が届かなくなる。

 なお、サハリン1では禁輸措置をしていない現在でも、すでにタンカーによる出荷が事実上ストップしているのだ。

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