岸田文雄首相は1月21日、バイデン米大統領と初めての首脳会談を実施した。バイデン政権発足から1年。中間選挙を今秋に控えて支持率が低迷し、議会対策もままならず、内政で四苦八苦して、外交どころではない。日本としては何とか1時間余のビデオ会談にこぎつけるのが関の山だった。米側は準備らしい準備もできず、日本側が整えざるを得ない事情を考えれば、成功と言っていいだろう。

(写真:Adam Schultz/The White House/AP/アフロ)
(写真:Adam Schultz/The White House/AP/アフロ)

 まず事前準備で大事なことは、何を目玉の成果として新聞の見出しにするかだ。それが今回は「経済版2プラス2」の創設だ。経済安全保障を看板政策とする岸田内閣としては「外務・防衛閣僚による2プラス2だけでなく、外務・経済閣僚による2プラス2も」というのは、一般人にも理解されやすい。

経済安保の連携も要注意

 重要なのは、そこで何を議論するかの中身だ。実は、これはすでに合意されたものが用意されている。昨年4月、菅義偉前首相が訪米した時の日米首脳会談で合意された「日米競争力・強靭(きょうじん)化パートナーシップ」がそれだ。今回はそれを進める閣僚レベルの場を作ることで十分だ。

 これまで日米間の経済分野では防衛分野と違って、さまざまな枠組みがあった。経済となると、米国通商代表(USTR)や財務省なども関わってくる。私が経済産業省の米国担当課長であったブッシュJr.政権時代には、日本側の提案で次官級での5対5会合を新設した。

 しかし上記のパートナーシップが焦点にしているのは、半導体などのサプライチェーンや重要技術の育成・保護といった経済安保が中心だ。そうとなると、プレーヤーは自然と米側がレモンド商務長官、日本側は萩生田光一経済産業相に落ち着く。

 実はこのパートナーシップを昨年4月に立ち上げて以降、日米間の実務レベルでは目ぼしい進展はなかった。それはバイデン政権の高官指名の遅れによる不在もあるが、とりわけ昨年後半以降のバイデン政権の“機能不全”によるところが大きい。半導体など戦略物資のサプライチェーンについて分野別に連携しようにも、議会運営に四苦八苦しているバイデン政権の動きは鈍い。

 経済安保での連携といっても、“構え”だけで、“実態”がついてこない。これが閣僚レベルに格上げされても、問題はバイデン政権が機能するかどうかだ。

 また米国は自国中心主義で、半導体や蓄電池などの「戦略産業の囲い込み」をしようとしていることも要注意だ。日本が不用意に突っ込むと、日本からの一方的な産業・技術の持ち出しになりかねない。連携とは表面的には耳障りはいいが、実態を見極めて冷静に対応すべきだ。

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