これに対して、中国の加盟申請に対しては、「歓迎」の言葉はなく、「高いレベルを満たす用意ができているかしっかり見極める必要がある」と原則重視の筋論に徹した。対応の差は一目瞭然だ。客観的に見ても、参加資格を満たすレベルは雲泥の差だから当然と言えば当然だ。

 対する中国は、予想通り台湾の加盟申請に断固反対すると猛反発した。「一つの中国」の原則を強調するが、これは中国特有の“いちゃもん”にすぎない。

 加盟資格は「国」だけでなく「独立の関税地域」も規定されている。また台湾はアジア太平洋経済協力(APEC)や世界貿易機関(WTO)のメンバーでもある。シンガポールなどとも自由貿易協定(FTA)締結しており、米国とのFTAも俎上(そじょう)に上っている。FTAの一種であるTPPに参加できないはずがないのはだれが見ても明らかだ。

 それでも中国は、加盟各国に台湾の加盟を認めないよう激しく圧力をかけてくるだろう。

中国は “要観察”扱いに

 一方、中国の加盟申請の狙いはこうだ。中国はTPPを中国包囲網ととらえており、その加盟国の分断が狙いだ。中国市場を餌に加盟国に“踏み絵”を踏ませて分断する。加盟交渉に入りさえすればじっくり各個撃破できるので、いくら交渉が長引いてもかまわないというのが本音だ。

 それではこうした中国の加盟申請にどう対処すべきか。早速、懸念すべき意見が聞こえてくる。「中国の加盟申請を門前払いせず、加盟交渉ぐらいはすべきだ」──。これは一見もっともらしいが、交渉のプロセスを踏まえない安易な意見だ。

 加盟プロセスは2段階の決定を経る。第1段階は加盟交渉を開始するかどうかの決定、第2段階は加盟を承認 する決定だ。メディアはこれをまるで意識していないが、これを区別して対応を考える必要がある。

 焦点は第1段階の入り口だ。加盟交渉に入りさえすれば例外措置を個別に認めさせて、ルールを骨抜きにできるとの中国の思惑をいかに阻止するかだ。この入り口で甘くすると中国の思うつぼだ。

 まずそこで、これまでの国際協定を順守してきた実績も踏まえてルールを順守するかどうかを厳しく見極めることが重要だ。かつて中国とのWTO加盟交渉で 苦い経験をしているからだ。

 実は6月に英国の加盟交渉開始を決定した際、「TPPのすべての既存のルールに従う ための手段を示さなければならない」とされていることに注目すべきだ。

 そして今回、台湾が「すべてのルールを受け入れる用意がある」と表明したことは重要だ。 先行する英国と同様に、台湾もこれに従ってTPPのルールを“丸のみ”する覚悟と道筋を明らかにすれば、中国と明らかに差があることがはっきりする。そして中国も同様のコミットをしないと加盟交渉にも入れず、加盟申請 を“要観察”扱いにすべきだろう。これは“門前払い”とは違う。“加入交渉入り”でも“門前払い”でもない、第3の道だ。最近の習近平政権が経済の統制を強めて国有企業も強化するなど改革に逆行していることから、“要観察”扱いにする正当性もあるだろう。

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