耳目が海外のアフガンと国内の政局に注がれている中で、中国は米中対立への手を着実に打っている。経済面では国産化政策を着実に加速しているのだ。米中対立の長期化を覚悟して、中国は従来のグローバルな供給網から中国中心の供給網・自立へと脱皮を急ぐ。そのカギを握るのが先端技術の獲得だ。そしてその標的になりそうなのが日本企業だ。

国産優先で外資企業を揺さぶる

 8月、中国が政府調達で国産を優先して、外国製品の排除を進めているとの報道があった。中国政府が5月に地方政府へ通知した内部文書を入手したことによるものだ。報道によると、医療機器をはじめとする先端機器で、41分野の315品目が対象になっている。中国の国産製品を政府調達の調達条件とする狙いは何か。

浙江省にある中国企業のシリコンウエハー製造拠点(写真:VCG / Getty Images)
浙江省にある中国企業のシリコンウエハー製造拠点(写真:VCG / Getty Images)

 注意しなければならないのは、こうした方針は以前からあり、決して新しいものではない。報道された内部文書自体も「2021年版」となっており、同様の文書はこれまでも通知されている。むしろ何故この時期に、こうした内部文書が報道されているかだ。中国政府の意図の方が重要だ。

 それは明らかに先端技術を有する外資企業を中国国内での生産に追い込む狙いだ。それによって外資企業の有する先端技術の獲得を狙っているだけに、外資企業にとって技術流出のリスクをはらむ。

 しかも外資企業が中国生産したからといって、必ずしも“中国製品”として扱われるわけではないことは要注意だ。実態は事実上中国企業が生産する“中国ブランド“が優先される。中国生産を始めてから「見込み違いだった」では後の祭りだ。「国産優先に対しては中国生産すればよい」と単純に誤解している日本の経営者も多い。

 さらに中国の場合、政府調達の意味合いは欧米、日本等とは比較にならないほど大きい。公表されているものだけで総額は約56兆円で、うち地方政府が9割強を占めるとされている。例えば医療機器だと購入する病院の多くは公的だ。また民間企業による調達も政府調達の基準に事実上「右へ倣え」と影響されるので、インパクトは大きい。

 米国はバイデン政権が製造業を保護するため自国製品を優遇する政府調達を拡大する「バイ・アメリカン」の強化を打ち出している。あたかもこれに対抗して「バイ・チャイナ」を打ち出したかのように見えるので、国際的な批判をかわせるとの計算も働いているだろう。

 しかも世界貿易機関(WTO)の政府調達協定では内外企業の差別を禁じているが、中国はこれに加盟していないので、大胆な内外差別がまかり通ってしまう。

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