今回の主要7カ国首脳会談(G7サミット)において、民主主義国の結束を示すことができただけでも意義があると素直に感じるのは、国際協調を壊した米トランプ前政権に落胆してきたからだろう。経済規模を考えると、「G7復権」というのは言い過ぎだろうが、G7の結束・協調はそれ自体、対中国、対ロシアけん制に当然有効だ。

(写真:AFP/アフロ)

 私もかつて現役時代にG7サミットの事務方を担当したが、その経験から見えてくるプロセスがある。G7サミットになるとまず外務省が考えるのは、「何を成果としてアピールするか」、「何を目玉とするか」だ。もちろん会議の事前事後のメディアに対するブリーフィングもそれを意識して行われる。

「台湾」明記に焦点を当てるシナリオ

 今回の場合、まず対中国でG7が結束して対応する姿勢を明確にすることだ。中国の「一帯一路」に対抗するインフラ支援もそうした成果の目玉とする。そしてその延長で、地理的に離れた欧州も巻き込んで、「台湾」を初めてG7首脳宣言に明記することを日米連携の成果とする。国内的には、政局化しかねない開催反対論を意識して、東京五輪の開催支持を取り付ける。

 日本の報道を見ていると、日本の外務省が描いたシナリオは明確だ。そして、国内の識者のコメントも判を押したようにそれに沿って評価している。これまでも繰り返されて定着した日本特有のパターンだ。

 ただ注意しなければならないのは、あくまでも外務省によるブリーフィングに頼って、2次情報での報道になってしまうことだ。その結果、欧米の報道とのギャップも出てくる。日本のメディアもせめて共同宣言の全文を読みこなし、他国の記者会見の内容もフォローして“裏取り”する取材力が必要だ。

 例えば、日本の報道では外務省の意図通りに「台湾」の明記に焦点が当たって、見出しを飾っている。もちろん日本の国益としてそのことの意義、重要性を認めた上であえて指摘するが、全体を見たバランス感覚も必要だ。

 宣言文では、4月の日米首脳会談での共同声明を踏襲して、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」との一文が明記されただけだ。それだけでも、欧州を巻き込んで中国にメッセージを送る意義は大きい。ただパラグラフだけでも70もある宣言文の中での一文にすぎず、今後の具体的行動が言及されているわけではない。

 また日本の報道では中国にばかり焦点が当たっているが、米国の報道ではロシア問題も重要視されている。宣言文ではロシアに関するパラグラフもたっぷり書き込まれている。ウクライナ問題への言及も当然だ。米欧の共通の懸念が背景で、このG7サミットの直後にバイデン大統領はプーチン大統領との米ロ首脳会談も予定されているので、当然の関心の向き方だ。

 こうしたことも含めてバランスよく宣言文を読み解くことが必要だ。

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