日本でも国家戦略としての半導体戦略が動き出す。米中対立の中で、両国がそれぞれ5兆円を超える支援策で、なりふりかまわず半導体産業を囲い込もうとしていることへの危機感も背景にある。
自民党の半導体戦略推進議員連盟の旗揚げは、甘利明・税制調査会長を会長に、安倍晋三氏、麻生太郎氏の両首相経験者を最高顧問とする、かつてない異例の強力布陣だ。経済産業省も専門家を集めた戦略検討会議をつくって、その提言を大臣自らが発表した。

座長を務めた東京エレクトロンの元社長の東哲郎氏も日経ビジネスのインタビューで、国のかつてない本気度を語っている(参考記事:東京エレクトロン元社長・東氏「日本は波に強いヨットを目指せ」)。
大臣自身が「失われた30年の反省」とコメントするのは重い。その中にはかつての「日の丸半導体」を目指した失敗も含まれている。
台湾TSMC誘致だけでは見誤る
「自前主義からの脱却」──。その象徴が受託製造会社(ファウンドリー)最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の誘致だ。経緯、内容については様々な記事で書かれているので、ここでは詳細を割愛する。ただ、こうした話題性のある点ばかりが注目され論じられているが、それでは半導体戦略の全体像を見誤ってしまう。

専門的にならない範囲で必要なことをポイントだけ言おう。全体像をみるために、日本の強み弱みのポイントだけは押さえておきたい。
十把一からげに半導体と言っても、分野別に半導体の種類が違い、各国の強み・弱みがあり、戦略も違ってくる。人体で例えると、頭脳に当たる制御用のロジック半導体、データ記憶用のメモリー半導体、目鼻に相当するセンサー半導体、筋肉に相当する電力制御用のパワー半導体などだ。日本の半導体は凋落(ちょうらく)していると言っても、メモリー、センサー、パワーなどでは世界で戦えるプレーヤーは残っている。
また半導体産業は設計、製造、そしてそれを支える製造装置、部材と、様々な産業が国際的に分業してエコシステムとして成り立っている(下の図)。その中で、日本の強みは製造装置と部材だ。
そうした全体像の中で、日本に決定的に欠けているのがロジック半導体の設計・製造だ。その製造の最先端を行くのが台湾のTSMCで、今回の誘致はその欠けているピースを埋めるための必要な一歩だ。
「一歩」というのは、今回の誘致は「製造プロセスの開発」だけであって、「製造」そのものの量産工場をつくるわけではないからだ。日本企業との合弁での量産工場にゆくゆくはつなげていく青写真を描いているが、それは今後の展開次第だ。
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