米国の税関当局がファーストリテイリングが運営する「ユニクロ」のシャツ輸入を差し止めた。中国・新疆ウイグル自治区の団体「新疆生産建設兵団(XPCC)」が関わった衣料品などの輸入を禁止する米国の措置に違反する疑いがあるとされている。

 前稿「G7外相会合で露呈した『人権問題』という日本のアキレス腱」で、「企業は米欧と中国の板挟み」と指摘したが、まさにそれが現実のものとなった。

 中国の新疆ウイグルの人権問題を巡る米欧と中国の対立が通商にも波及し、日本企業も深刻なリスクに直面している。

公表した米国の政治的意図は?

 米通商代表部(USTR)は3月1日、バイデン政権の通商政策に関する報告書を議会に提出した。その中で中国の人権侵害問題に「最優先で対処する」とした。

 「米国人や世界の消費者は、強制労働で作られた製品を求めていない」──。報告書では強制労働による製品の貿易を規制する考えを示している。議会との関係でUSTRのタイ代表はこの強制労働問題で成果を出すことが最重要課題になっている。

 タイ代表は就任直後の3月、主要各国のカウンターパートと電話会談をしている。日本は茂木外務大臣と梶山経済産業大臣だ。USTRのホームページを見ると、日本では報道されない実態が浮かび上がってくる。

 欧州各国のカウンターパートと次々と行った電話会談では、その主要テーマには全て「強制労働」が挙げられている。ところがどういうわけか日本との電話会談についてはこの言葉の記述がない。米国側関係者への取材によると、茂木大臣との電話会談で取り上げられていたようだが、外務省による発表では一切触れられていない。よほど触れてほしくないのだろう。日本側の“大本営発表”しか取材しない日本のメディアではそうした実態が浮かび上がってこないのだ。

 今週、5月27・28日には主要7カ国(G7)貿易大臣会合が予定されている。議長国の英国の関係者によると、トラス国際貿易大臣も新疆ウイグルの強制労働問題をG7で扱う意向だという。タイ米国通商代表とともにこの強制労働問題で共振し合い、日本は孤立する状況も予想される。「日本は人権問題になると及び腰で、共同歩調の課題」というのが欧米の政策当局者の間の共通認識だ。

(写真:新華社/共同通信イメージズ)

 そうした会議を控えた5月10日にユニクロの輸入差し止めが米国当局から公表された。1月にロサンゼルス港の税関で輸入が差し止められ、3月にユニクロが差し止めの解除を求め、4月に米国の当局がこれを拒否したのが本件の経緯だ。この時点で公表したことには何らかの政治的意図を感じざるを得ない。

 前稿で指摘したように、日本の外務省は中国の人権問題に焦点があたらないようにと躍起になっている。しかし6月のG7首脳会議に向けて、この大きな流れは変えられないだろう。

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