「米、対中結束で成果」「中国の覇権主義けん制で日米欧連携」──。日本時間5月6日に閉幕した主要7カ国(G7)外相会合を巡っての日本の報道だ。とりわけG7で初めて「台湾海峡の平和と安定」が共同声明で明記されたことを挙げている。

 4月の日米首脳会談での共同声明と同じ表現に欧州も足並みをそろえた意義は大きい。課題を共有する分野として「台湾」が新たに追加されたわけだ。同盟国との連携を掲げるバイデン政権によって米国の指導力が復活したとも評価している。

英国にて対面方式で開催されたG7外相会合(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 日本の外交当局の発表ぶりから日本の報道はもっぱらこうした台湾問題に集中している。しかしもう一つの欧米が重視している分野を忘れてはならない。日本だけが腰が引けている人権問題だ。日本のメディアではほとんど触れられていないので、この点に焦点を当てよう。

人権で及び腰の外交当局

 人権については「深い懸念」を示すことはこれまでも繰り返されている。問題は具体的行動にどこまで踏み込めるかであった。懸念表明しかできないと、中国からは見透かされる。具体的行動なくしてG7が集まる意味はない。しかしそのネックはG7で唯一制裁行動をとっていない、及び腰の日本だ。

 日本は孤立回避のために、「守りに徹した事前調整」に躍起になっていたようだ。外交当局のブリーフィングを基にした“大本営発表”の報道が横行する日本のメディアでは触れられていないことがある。共同声明は英文で1万2千字以上ある長文で、87パラグラフもある。中国に関しては6パラグラフあるが、その中にこんな一文が挿入されている。

 「ビジネス界への啓発、助言、支援を含めて、各国国内で利用可能な手段で強制労働に対して対処する」──。ここだけ異様に具体的な書きぶりになっている。こうした表現が入っているのは、明らかに日本の涙ぐましい外交努力の成果(?)だ。

 日本以外のG7がウイグルでの人権侵害に対する中国への制裁で足並みをそろえる中で、日本は「深刻な懸念」の表明だけだ。G7で人権侵害のみを理由に制裁する法律がないのは日本だけだ。「日本は手ぬるい。ならば根拠法を作ればいいじゃないか」と批判されるのを恐れて、防波堤として日本が「各国国内で利用可能な手段で」と書き込んだのは明らかだ。

 外務省OBを中心に、「日本には日本のアプローチ、手法がある」との意見をよく聞く。もちろん欧米的手法だけが正しいとは思わない。しかしそうならば、納得できる日本としての手法を具体的に説明すべきだろう。それがなければ、単にやらないための強弁にしか聞こえない。聞く耳を持たない中国に対して、単に「対話の呼びかけ」というだけではむなしく響く。

 外交において人権問題をどう取り扱うかが悩ましいのは事実だ。国際的に人権侵害を客観的に判断する仕組みがない中で、各国は独自の判断をせざるを得ない。二重基準(ダブルスタンダード)など、恣意的判断にもなりかねない。

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