本丸は「台湾」と「人権」

 あくまでも今のバイデン政権にとっての「本丸」は台湾と人権であった。米国にとって今回の首脳会談は「中国対抗のための首脳会談」だ。その対中政策の中核であるにもかかわらず、日本側の腰が引けているからこそ、よく言えば「すり合わせする」、悪く言えば「追い込む」。そこに今回の首脳会談の目的があった。

 3月の2プラス2から周到に仕掛けていくシナリオは、さすがに実務重視のバイデン政権の真骨頂だ。米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官に任命されたカート・キャンベル氏が仕切ったようだ。

 仕上がった共同声明だけを表面的に読んでも、そうした本質は見えてこない。当然のことながら、事前準備で最後まで共同声明の文言づくりで難航したのが、この2つの本丸案件だった。

 台湾問題では、米国は2プラス2の共同文書で日本に飲ませた「台湾海峡の平和と安定の重要性」という文言をさらに一歩踏み込んで強めようとした。他方、日本は中国の反発を恐れて2プラス2どまりの表現で踏みとどまろうとした。そうした綱引きの妥協の産物が最終の文言になった。

 人権もそうだ。2プラス2の共同文書の「深刻な懸念の共有」の文言もさらに踏み込むことを米国は要求したが、日本は抵抗し切ったようだ。欧米諸国が制裁に踏み出しているのとは一線を画して、伝統的な“対話路線”にこだわった。

 今回の共同声明の文言では米国は妥協したが、これで終わりではない。忘れてはならないのが人権重視の欧州の存在だ。6月の英国での主要7カ国首脳会議(G7サミット)において日本は孤立しかねない。

重い宿題にどう対応するか

 とりあえず共同声明の文言は合意したが、問題はこれからだ。ある意味、首脳会談はキックオフだ。菅首相はこの2つの問題で大きな宿題を背負って日本に帰国した。

 台湾問題では日本が日米での抑止力強化のために主体的に何ができるかが問われる。具体論として、中距離ミサイルの配備問題を巡る議論は避けて通れないだろう。さらにもっと大事なのは、台湾有事において後方支援だけにとどまらず、限定的な集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」に当たるのかどうかといった議論も不可避の重いテーマだ。

 人権では共同声明は「深刻な懸念」で済ませても、何らかの“行動”あるいは“行動の用意”も必要になってこよう。国内では親中派の反対で国会決議もできない状況だ。国会決議は日米首脳会談で米国に押し込まれてから行う予定のようだ。

 制裁の根拠となる法律がないことを理由にしているが、欧米からは言い逃れにすぎないと見られている。発動するかどうかは別にして、せめて“行動の用意”ぐらいはあるべきではないか。「人権侵害制裁法」の制定を目指した超党派の議員連盟も本気度が問われる。

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