テンセントによる出資は楽天の米国事業を左右する?

 他方、米国はテンセントの楽天への出資を厳しい目で注視している。実はこの件は日本の法規制だけでなく、米国の規制対象にもなることはあまり知られていない。

 米国では外国人による米国企業の買収、株式取得などが安全保障に与える影響を調査する権限が対米外国投資委員会(CFIUS)に与えられている。それを受けて大統領が取引を停止・禁止できるのだ。しかも取引の事後でもインテリジェンスの情報で問題が判明すれば、遡って取引を停止・禁止できる。極めて強力な権限で、企業にも恐れられている。

 楽天は5G 関連など米国でも事業を行っている会社だ。そうした会社に対する出資は米国の法律ではCFIUSによる規制対象になる。CFIUSは楽天に対するテンセントの投資を調査して、問題があれば遡って大統領は無効化することもできる。

 例えば、2018年10月、日本の大手建材・住設メーカーLIXIL(当時LIXILグループ)はイタリアの建材子会社を中国企業に売却しようとした。しかしこの子会社は米国でも事業を行っており、CFIUSから承認されず、売却契約は解除に追い込まれた。米国で事業をしている企業には、米国以外での取引にも米国は介入できるのだ。

 本件は「安全保障上重要な通信事業をしている楽天」と「中国政府との関係で懸念のあるテンセント」という組み合わせである。米国が抱く安全保障上の懸念はLIXILのケースの比ではないだろう。

 さらに楽天は、注目すべき米国事業にも進出している。楽天は2019年5月、モバイル通信分野で5G関連の技術も有する米国企業に出資して資本業務提携している。その際は、CFIUSの審査を経て承認されている。しかし今回、テンセントからの出資を受け入れ、その業務提携の内容次第では、いったんは得た承認にも影響する恐れさえある。

 楽天の米国事業への影響はCFIUSとの関係だけではない。

 楽天はトランプ政権下で信頼できる通信事業者による「クリーン・ネットワーク構想」への参加が認められている。そして5G対応のための米国主導の新たな業界団体にも参加している。こうした米国主導による枠組みに参加している楽天が、テンセントと提携することを米国はどう見るだろうか。信頼できる“クリーン”なプレーヤーとみなし続けるだろうか。

 「単に出資を受けるだけ」という説明では納得するとは思えない。今後明らかになるテンセントとの提携内容次第では、楽天の米国事業への影響が懸念される。

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