レアアースで反撃狙う中国

 一方、レアアースでは半導体の場合と攻守が逆転する。半導体というアキレス腱(けん)を持った中国が反撃を狙うのが、世界生産の6割超を占めるレアアースの分野だ。

 昨年10月、党の機関誌「求是」に掲載された習近平(シー・ジンピン)国家主席の講話がそれを示している。

「国際的な産業チェーンで中国との依存関係を強めさせ、外部からの(人為的な)産業チェーンの断絶に対して、強力な反撃力と威嚇力を構築する」

 そのための手段として昨年12月に施行された輸出管理法を使う構えを見せて脅している。

(関連記事:中国は切り札「レアアース」を出すか? 輸出管理を巡る誤解を解く

 さらにレアアースの供給網全体の統制を強化する「レアアース管理条例」を制定しようとしている。

 米国もレアアースは軍事用途に直結するだけに、中国の脅しに手をこまぬいてはいない。以前から中国に依存しない供給網を構築しようと、例えば、オーストラリア企業は米国防総省の資金援助を得て、米国に工場を建設する。日本もレアアースから高性能磁石を生産する技術で、供給網の重要プレーヤーの一翼を担っている。

 日本に必要なのは技術の開発だけではなく、技術の流出を阻止することだ。

 かつて高性能磁石で強みを発揮していた日本企業も、中国への工場進出の結果、技術流出が起こり、今では中国メーカーの後じんを拝する始末だ。中国はレアアースの供給網を、まず上流のレアアースの鉱石から製錬する技術を押さえ、そして高性能磁石の生産に、さらに今後は駆動用モーターへと、次第に下流を押さえにかかっている。日本企業が手掛ける駆動用モーターが、高性能磁石の二の舞いになってはいけない。

電池、医薬品も経済安全保障の俎上(そじょう)に

 電池についても電気自動車(EV)の基幹部品であるリチウムイオン電池は約80%が中国で生産されている。危機感を持って脱中国で先行しているのは欧州だ。その内容は前稿「電池を中国に頼る危うさ、『グリーン』を巡る覇権争いで日本は?」を参照していただきたい。

 日米も出遅れていてはいけない。

 脱炭素を掲げ、EVの普及を急ぐバイデン政権だが、EVのコストの中で大きな比重を占める基幹デバイスの電池を、寧徳時代新能源科技(CATL)などの中国企業の安価な製品に依存することになってしまう。中国も米国の雇用への貢献をちらつかせて、米国での工場建設というカードを切って揺さぶってくるかもしれない。

 そこで有力電池メーカー、パナソニックを抱える日本としては、現状は価格競争力で中国に劣後しても、将来の日米連携を模索すべきだろう。日本も2兆円の基金で全固体電池など次世代の電池開発を支援しようとしている。こうした技術開発をバイデン政権にアピールして、脱炭素を日米協力の柱にすべきだ。そして同時にルール作りでの欧州との連携も欠かせない。

 医薬品についても中国はあからさまに米国に対して恫喝(どうかつ)している。昨年3月、中国国営・新華社は社説で「中国は医薬品を輸出規制することができる。そうすると米国は新型コロナの大海に沈むだろう」と書いている(関連記事:半導体、アビガン……新型コロナ経済対策の裏で安全保障の米中激突)。これは米国に対してだけでなく、日本も含めて世界に対しての恫喝だ。

 世界の医薬品の原料は安価な中国に依存している。特にペニシリンなどの重要な抗菌薬の原料もそうだ。新型コロナがきっかけになって、これまでのコスト一辺倒への反省がなされ、経済安全保障の問題として早急に取り組むべきだ。日本は足元の新型コロナ対策に忙殺されて余裕がないようだが、こうした根本問題に官邸はもっと主導権を発揮しなければならない。

 米国が100日かけて供給網を一から検証するのもいいが、こうした同盟国との連携した動きは、既に始まっている。必要なのは「脱中国」の掛け声ではなく、具体的な行動だ。日本も半導体や電池のように動き出しているものもあるが、医薬品などはお寒い状況だ。官邸主導で供給網強化にもっと本腰を入れるきっかけにすべきだろう。

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