中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席(写真:新華社/アフロ)
中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席(写真:新華社/アフロ)

対中制裁への対抗策で日本企業は“股裂き”か?!

 中国商務省は1月9日、米国の対中制裁に同調した外国企業を相手に、中国企業が損害賠償を請求できるとする規則を施行した。米国は昨年から、華為技術(ファーウェイ)への事実上の禁輸を強化し、米国の法律の適用範囲を海外にまで広げる“域外適用”で、外国企業によるファーフェイへの再輸出も規制している。そしてファーウェイに続いて、中国の半導体企業SMIC(中芯国際集成電路製造)も、そうした事実上の禁輸の対象に加えている。今回の中国の措置は、このような米国の動きへの対抗策だ。

 裏返せば、米国の再輸出規制が、日本企業による米国の技術を使用した半導体関連製品での中国との取引を止めるという、深刻な影響を与えていることを物語っている。

 日本企業は、米中の間で“股裂き”状態になっている。

 中国が米国によるファーウェイ制裁の域外適用を不当と判断すれば、米国の再輸出規制に従って取引をやめた日本企業が中国で損害賠償を請求されるリスクがある。まさに米国に従うか、中国との取引を優先するかの“踏み絵”を踏まされるのだ。

中国の米国への対抗策は既定路線

 最近の日本の報道は何でも「バイデン政権の発足を前に」という枕詞(まくらことば)を付けて解説する。今回の措置も「バイデン政権の発足を前にけん制する狙いもある」と報道している。しかしこれは必ずしも正しくない。

 大統領選以前から、既に日本企業はこの米中の応酬で深刻な“股裂き”状態に直面しているのだ。

(参考記事:「米中対立の武器、『輸出管理』に日本企業は翻弄される」2020年10月22日付)。

 中国では昨年9月19日から「信頼できない企業リスト」が導入され、そして10月17日には輸出管理法が成立している。これらの措置は米国への対抗策であるとともに、日欧への揺さぶりでもある。今回の措置はこれらの延長線上で、実施のための規則ともいえる。

 前者では、商業上の理由以外で正常取引を中断した外国企業もリストに載せられ、輸出入の制限や禁止などの制裁の対象になる。これは、米国による事実上の禁輸措置に伴う再輸出規制によって取引を停止する外国企業を想定したものだ。このリストへの掲載を脅しに、米国の再輸出規制に従わないよう外国企業に圧力をかけようとしているのである。

 後者についても、国家の安全と利益を害する外国企業に対して、法的責任を追及することが規定されている。中国自身、米国に対抗して域外適用を規定しておきながら、米国の域外適用には従うな、というのは身勝手な論理だ。

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