
中国の輸出管理法が10月17日、全国人民代表大会(全人代)常務委員会で成立し、12月1日に施行される。中国に対して輸出管理の武器を振りかざす米国への対抗措置と明確に規定している。
まず結論としての評価を言おう。
表面的には米国の制度を一見まねているかのようで、今回の対抗措置への批判に対しては「米国も同様で、中国だけではない」と反論するつもりだろう。しかし、後述するように警戒すべき規定が随所に入っている。「運用次第では日本企業にも影響の可能性がある」とメディアは報じるが、事態はもっと深刻だ。運用に透明性がなく、恣意的に行われるのは中国では日常茶飯事だからだ。
中国の「情報戦」には要注意
また、「国家安全保障を理由に中国を規制した国に対する対抗措置で、『目には目を』という趣旨だ」との説明が一部で見られる。そして「日本が中国をそのように刺激しなければ、今までと何も変わらず無関係だ」との解説が流されている。
こうした見方には要注意だ。
中国が最も避けたいのは、日本が米国に同調して中国に対抗する事態だ。米国は対中政策で同盟国に協力を求めようとしている。日本でも、「米国は輸出管理で有志国での連携を提案する」との報道もある。中国が期待しているのは、そうした事態を避けるために、「中国を刺激して怒らせると中国の輸出管理法の餌食になる」と日本の産業界に思わせることだ。
日本の産業界はこうした“揺さぶり”にことのほか、弱い。日本政府に対して「中国を刺激しないように」と、よく言えば「懇願」、悪く言えば「圧力」をかけてくるだろう、と中国は読んでいる。
これこそ、中国が得意とする「情報戦」だ。
今後、“中国専門家”からこうした発言があれば、中国政府によるプロパガンダの影響をまず疑うべきだろう。また日本政府も産業界も中国に“揺さぶられない”よう、腰を据えた対中政策を展開すべきだ。
それでは何が懸念されるか具体的に見てみよう。ただし、規制対象のリストや規制の細則はこれからで不透明なところはある。
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