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(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 韓国に対する輸出管理問題が再燃か?!

 韓国は6月2日、日本の韓国に対する輸出管理の厳格化措置について世界貿易機関(WTO)に提訴する手続きを再開すると発表した。この問題になると、なぜか臆測、邪推が飛び交って事実がゆがむ(関連記事:誤解だらけの「韓国に対する輸出規制発動」)。激化する米中の半導体戦争に影響されて、「米中の代理戦争」だとのコメントもメディアで喧伝(けんでん)される。ストーリーとしては面白いが、事実は異なる。

真逆の臆測や見立てが飛び交う

 簡単に経緯を振り返ってみよう。

 2019年7月、日本は韓国に対して半導体関連の3品目の輸出管理を厳格化するとともに韓国を優遇する「ホワイト国」から除外した。韓国はいわゆる元徴用工問題に対する報復だとして同年9月にWTOに提訴。軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄もちらつかせて撤回を求めた。しかし同年11月、米国が韓国に強い圧力をかけてGSOMIA失効を停止させた。韓国はWTO提訴の手続きも中断し、輸出管理の問題は日韓当局間が局長級の政策対話をすることとなった。

 当時、ある大御所評論家はテレビでこうコメントした。「米国が日韓双方に圧力をかけて7月以前に戻せということ。すなわち韓国のGSOMIA破棄と日本の輸出管理措置の双方をチャラにさせた」

 韓国は国内向けのメンツから、GSOMIAと輸出管理をリンクさせ、米国が日韓双方に調停したように見せようと必死だった。そんな韓国をぬか喜びさせかねないコメントに、私は率直に「邪推だ」と指摘した。その後の日本の輸出管理の動きを見れば、これが邪推であったことは明らかだ。

 当時、米国の外交当局が「米中対立のさなかに、日韓があまりいがみ合ってほしくない」との姿勢であったのは間違いない。しかしそこから「日韓双方に圧力をかけた」とするのは飛躍した臆測だ。

 そして今度は韓国問題に詳しい論者などから真逆の臆測が飛び出している。

 「半導体を巡る米中の激しい争いの中で、米国は韓国から中国への半導体材料の横流しの事実をつかんで、これを抑えるべく、日本に韓国への輸出を止めさせた」というものだ。日韓の輸出管理問題を「米中代理戦争」と断じている。

 最近、米国において中国の半導体生産への警戒感が高まっている中で、もっともらしいストーリーとして面白いが、これも事実ではない。当時の輸出管理問題に対する米国の姿勢とは明らかに矛盾する。

 「米中央情報局(CIA)などから中国への横流しの事実を伝えられて輸出管理の厳格化に至った」と、まことしやかに語られるが、事実はそうではない。経産省は輸出者への立ち入り検査で輸出者のずさんな管理の実態を把握できる。何でも米国の諜報(ちょうほう)情報に依存していると決めつけるのは間違いだ。

 さらに最近の米国による中国ファーウェイ制裁強化の結果、台湾の半導体メーカー・台湾積体電路製造(TSMC)に代わって、韓国のサムスン電子がファーウェイに半導体を供給するとのコメントもある。これも事はそう単純ではない。そもそも米国の規制の網はサムスン電子にもかかり、サムスン電子は米中の板挟み状態だ。しかもファーウェイはスマホ、携帯でサムスン電子にとってライバル企業でもある。単純に「中国の代理」というわけにはいかないのだ。

 さまざま論者たちによってこうした真逆の臆測や見立てが飛び交うのは、輸出管理への理解不足から来ているようだ。

「半導体3品目」と「ホワイト国」を巡る誤解の数々

 これまでも、しばしば誤解を解いてきたが、簡単におさらいしよう。
まず日本の措置は半導体関連の3品目を個別許可にした措置と韓国をホワイト国から外した措置の2つあり、分けて考えなければいけない。これらを混同している論者がいかに多いことか。

 結論を言えば、前者は輸出者に着目したもので、元に戻るのは輸出者の改善次第で時間の問題だ。他方、後者は相手国に着目したもので、韓国の輸出管理が信頼できると判断するまで当分の間続くだろう。相手国が信頼できなければその輸出管理が信頼できないのは当然だ。

 前者に関して、当時「不適切な事案」が発生していたことを覚えているだろうか。日本から韓国に輸出したものがずさんな管理で、そのうち相当量が行方不明になっていた事案が頻繁に発生していたのだ。これらは輸出者に対して立ち入り検査することによって発覚する。中国であれどこであれ、相当量が行方不明になっていることだけで、国際的に輸出管理上「不適切」となる。

 逆に輸出者が改善して管理をきっちりした取引が積み上がってくると、元に戻して簡便な手続きの包括許可を認めるのが筋だ。現に着実にそうなりつつあるので、解決は時間の問題だ(関連記事:日韓の輸出管理、やっと軌道に戻ったか?)。

 これに対して後者の「ホワイト国」については、相手国の輸出管理が信頼できるかどうかの問題だ。当局者間の意思疎通といった信頼関係があることが不可欠だ。韓国は輸出管理体制の脆弱や法制度の不備といった日本がこれまで指摘していた点について対策を講じてきたのは事実だ。ただしそれだけでは足りない。形だけでなく、運用が実効的かきちっと見極めて、日本が信頼できると評価するかどうかだ。

 そして根本的な点は、いずれも日本が輸出国の責任で判断するもので、相手国と交渉する性格のものではないということだ。「韓国に譲る、譲らない」という性格のものではない。