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米中の半導体戦争は泥沼化か

 またトランプ大統領による選挙対策だと指摘する向きもある。大統領選を控えて、新型コロナの感染拡大の責任を巡って中国への批判を強め、対中強硬姿勢に傾斜している。前日の14日にトランプ大統領は「中国との関係遮断もできる」と発言して、対中強硬姿勢をアピールした。

 しかしファーウェイへの制裁強化をこの一環と見るのは本質を見誤っている。前述の“抜け穴”については昨年来、議会も含めて問題視され、これを防ぐための措置が議論されてきたものだ。新型コロナ騒動以前には、一時25%を10%に引き下げて規制強化する案もあったが、トランプ大統領自身が拒否した経緯もある。議会はむしろトランプ大統領がファーウェイへの制裁を中国とのディールに使って安易に譲歩することを懸念しているぐらいだ。

 したがって今回の規制強化はトランプ大統領による“気まぐれ対中強硬策”ではなく、根深く、じっくり検討されたものと見るべきだ。

 中国政府は予想通り早速、強い反発をした。今後何らかの報復措置があることもちらつかせた。中国が策定することを表明している「信頼できない企業」リストに米国企業を掲載する可能性もある。

 また中国はIT機器を調達する際に安全保障の審査を行う「サイバーセキュリティー審査弁法」を今年6月から施行する。これは米国による中国製情報通信企業の排除に対抗するものだ。これを使って米国企業を排除することも予想される。

 まさに米中の半導体戦争は泥沼の様相を呈してきた。

 コロナ禍に目が行っている中で、米中対立は半導体を主戦場にして、「部分的な分断」が着実に進行中だ。米ソ冷戦期の「鉄のカーテン」になぞらえて、米中間の「シリコン・カーテン」とも言われている。好むと好まざるとに関わらず、こうした状況に直面して、日本政府の政策も日本企業の経営も安全保障を踏まえた判断を迫られているのだ。


補足

 前稿「危うい『医療の安全保障』、新型コロナが浮き彫りにする日本の弱点」において、「PMDAは長年医薬品原料の外国調達にむしろ傾斜している」との記述に対して、いくつかご指摘をいただいたので、補足したいと思います。

 PMDAはあくまでも科学的及び品質の観点からの医薬品の承認審査をしており、原料調達についてもあくまでも品質保証の観点であることはご指摘の通りです。ただ、その際の運用実態を見れば、海外での使用実績があれば安心して審査がスムーズであるのに対して、海外で使っていない国内調達の場合、審査でさまざま説明を求められ、その結果、根負けして諦めてしまうとの声もあります。品質保証のためには当然だと言えば、それまでですが、こうした運用実態が結果的に原料の外国調達に影響していることを付言したいと思います。