医薬品原料も中国依存の脆弱構造

 もっと本質的で深刻な問題は、医薬品原料の中国依存だ。

 中国が医薬品の輸出規制をちらつかせて米国をあからさまに恫喝(どうかつ)するメッセージを発したことは、前稿でも紹介した。例えば、米国で使用される抗生物質の95%以上は中国生産だという。

 これは米国に対してだけでなく、世界に対して発したものと受け止めるべきで、日本もひとごとではない。

 日本は医薬品の主成分である原薬を中国、インドなど海外に多く依存しており、さらにサプライチェーンの上流に遡った“出発原料”については、ほとんどが中国で生産されている。

 アビガンも原料のマロン酸ジエチルは中国からの輸入だ。今回、政府の要請を受けて、前述の国内回帰のための補助金を活用し、国内化学メーカーが休止していた国内の生産設備を再稼働させる。

 ほかにも、感染症治療に使われるペニシリンなど特に重要な抗菌薬の原料の多くも、中国に依存している。中国だけではない。さらに原料の安さを求めてインドからも調達している。

 インドも3月上旬、新型コロナの感染拡大を踏まえて、抗菌薬の原薬・製剤(26品目)について輸出規制をしたが、4月上旬に解除した。背景には米国からの強い圧力があったようだ。しかし外出禁止令の影響で、インドの国内物流が止まっているため、インドからの原薬・中間体の輸入はいまだにストップしており、日本の製薬会社の生産に影響が出ている。

 なお、医薬品のうち漢方薬についても中国依存は深刻だ。原料の生薬の8割は中国からの輸入だ。この生薬の安定供給も大きな問題であり、農水省も国内栽培を支援する事業に乗り出しているが、微々たる予算である。また国内栽培をしようにも気候、土壌の制約からなかなか難しい。

 今後、植物工場での栽培が可能になれば、土壌汚染の問題もなく、素晴らしい。ただ、まだ栽培技術のハードルは高い。技術開発にもっと国が本腰を入れるべきだ。

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