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新型コロナウイルスの治療薬として期待される抗インフルエンザ薬「アビガン」(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、日用品や家電などだけではなく、医薬品や医療機器の分野でも中国依存が白日の下にさらされた。まさに「医療の安全保障」が焦点になることを前稿「半導体、アビガン……新型コロナ経済対策の裏で安全保障の米中激突」で指摘した。その後、日本政府もこの問題に危機感を抱いて動こうとしている。さらに踏み込んで見てみよう。

医療の買収阻止に手を打つ

 新型コロナの感染拡大が、やっと政府を目覚めさせたようだ。政府は高度な医薬品や医療機器の分野で外資による買収阻止に動き出した。2019年秋に成立した改正外為法では、安全保障上、特に重要な業種を「コア業種」として厳格な審査の対象にしている。このコア業種に感染症の治療薬や人工呼吸器などの高度な医療機器を追加するため、5月に告示を改正する。

 もちろん念頭に置いているのは中国企業による買収だ。医薬品や医療機器に関連する企業を中国企業に買収されると、国の安全保障を損なうとの懸念からだ。新型コロナの治療薬として期待されている抗インフルエンザ薬「アビガン」の製造事業も対象だ。特に中国は国を挙げてアビガン製造に力を入れ、海外に提供して攻勢をかけようとしているので要注意だ。

 こうした改正外為法の動きは「医療の安全保障」への第一歩だ。しかしまだまだ序の口で、これだけでは到底足りない。

 「医療の安全保障」とはどういうことか。ポイントは国民の生命のために必要不可欠な医薬品や医療機器の「安定供給」である。

 それには「安定供給」が政策の柱である、石油政策が参考になる。2度の石油危機を経て、原油の中東依存度の高い脆弱な日本が取り組んだ石油政策とは、(1)中東以外からの供給の多角化・分散化、(2)備蓄の増強、(3)自主開発原油、であった。医薬品、医療機器も同様に、安定供給のためには(1)中国以外からの供給の多角化・分散化、(2)備蓄の増強、(3)国内生産、の組み合わせになる。