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新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、半導体技術や医療分野における安全保障を巡り米中の対立が激しさを増している(写真:代表撮影/picture alliance/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大による深刻な経済的打撃を受けて、各国で巨額の経済対策が打ち出されている。その中で生活支援や失業対策ばかりが注目されるが、見逃してはならない動きがある。3月下旬、欧米各国では「対内投資規制の強化」と「国家ファンドの設立」という、企業の買収防衛策が相次いで発表された。「コロナ・ショック」による株価急落によって、重要企業が外国企業に買収されるリスクを警戒したものだ。特に中国系ファンドへの警戒が高まっている。

 対内投資規制の強化については、欧州委員会が加盟国に対して強化を要請し、オーストラリアも緊急に強化した。

 注目すべきはドイツ、米国による国家ファンドの設立だ。いずれもこれまでの厳格な対内投資規制に加え、自国の重要企業が買収されるのを阻止するために国家ファンドを活用しようとしている。

欧米各国で相次ぐ重要企業の買収防衛策

 例えば、ドイツは約72兆円の経済安定化基金を設立した。そのうち約12兆円は重要技術や重要インフラの関連企業を守るために特定企業の資本増強に使われる。

 これは大企業のみならず、重要技術に関わる成長段階のスタートアップ企業も対象としている。ワクチンを開発する医薬品企業なども念頭にあるようだ。

 米国も為替安定化基金に5000億ドル(約55兆円)を追加して、特定企業に対する支援として米ボーイングの救済のみならず、国家安全保障上重要な産業に対しても出融資する。 

 さらに注目すべきはトランプ政権が1950年の朝鮮戦争時に制定された国防生産法を持ち出したことである。これは有事に政府が産業界を直接的に統制できる権限を付与するものだ。これを使って米ゼネラル・モーターズに人工呼吸器の製造命令を出したことは報道されている。

 しかし、国防生産法を活用できるのは、実は人工呼吸器の製造命令だけではない。あまり知られてはいないが、この法律に基づく国防生産基金を活用して、国家安全保障上重要な産業の設備を政府が購入して、民間企業にリースして生産させることができるのだ。

 例えば半導体産業などでの活用があり得る。