目先の対処に終始する、日本の緊急経済対策

 翻って日本はどうか。先日、緊急経済対策が発表された。

 焦点は中小企業の当面の資金繰り対策と生活支援の現金給付だ。もちろんこれは急を要する。しかし目先の問題にしか目が行かないのは問題だ。株価急落の結果、安全保障に関わる日本企業も体力も確実に弱まり、企業買収の格好のターゲットとなる危険な状況にある。

 さらにサプライチェーンの国内への生産回帰を支援することとなった。中国依存リスクを減らすことは重要だ(参照:新型コロナで日本を襲うサプライチェーン危機、中国リスクとは?)。

 しかし産業を限定せず、医薬品や半導体といった戦略的な産業に焦点を当てたものではない。しかも補助金、税の優遇といった旧来型の企業誘致策だけだ。もちろん、ないよりはあった方がいいが、これでは残念ながら限界がある。

 例えば、半導体生産については前述のように米中それぞれが国策ファンドを活用して自国に囲い込もうと躍起になっている。そうした中で日本はどう向き合うべきなのか。

 半導体産業は半導体、部材、製造装置といった様々な産業によるエコシステムとして成り立っている。日本の強みは部材メーカーと製造装置メーカーだ。これらの産業の技術流出を防ぎながら、次世代の半導体の技術開発を国策として進めるなど、エコシステム全体の戦略と強力な政策が必要だ。

 我々はすでに液晶パネルなどで苦い経験を繰り返している。

 半導体産業がこうした中国の巨大市場の磁力に抗することができるか正念場にある。旧来型の補助金政策だけでは向き合えないのは明らかだ。

 今回の緊急経済対策には、需要が急減した航空会社に対する資金繰り支援のために出融資も盛り込まれている。しかしたかだか1000億円規模では意味がない。

 諸外国の動きを見据えて、安全保障に視点に立って対象産業も資金規模も戦略的に考えるべきだ。大企業救済となると、お決まりのパターンで反発が出てくることが予想される。また国家ファンドというと、これまでの失敗例が思い浮かぶ。よほどこれまでの反省を踏まえた対応が必要だろう。しかし経済と安全保障が一体化した新たな動きに対応しなければならないのも事実だ。

経済と安保が一体化した“アフター・コロナ”時代への備えは急務

 アフター・コロナ”の時代は、米中技術覇権争いが激化する中で、世界は経済と安全保障が一体化していった。そうした流れを新型コロナが加速している。その結果訪れる“アフター・コロナ”の時代にどう向き合うのか。欧米各国は安全保障上重要な産業を自国内に確保することに躍起となっている。日本も足元の問題だけに終始せず、こうした動きにもっと危機感を持つべきだ。

 昨年秋の外為法の改正よる対内投資規制の強化でやっと欧米並みにキャッチアップしたのはよかったが、それだけでは不十分だ。日本も早急に国家ファンドを創設して戦略的に取り組むべきだ。

 今月、内閣の国家安全保障局に経済安全保障の司令塔になる「経済班」が設置され、スタートした。こうした問題も経済分野の国家安全保障として重要な任務ではないだろうか。

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