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新型コロナで勃発、半導体を巡る米中ファンド合戦

 半導体産業は米中の技術覇権争いの主戦場だ(参照:新型肺炎から垣間見えた、対中半導体ビジネスの危うさ)。中国は、対米依存を脱却するために自給率7割を目標に半導体産業育成に躍起になっている。第1期は2兆円の基金で半導体チップに投資し、第2期は3.2兆円の基金で半導体製造装置に投資するための巨大な国家ファンドを設けた。新型コロナの感染で封鎖された武漢はその戦略的な生産拠点で、封鎖中もこの半導体工場だけは操業を続けられた。

 こうした中国の動きに米国も危機感を抱き、国防権限法2020でも半導体産業を対中戦略の要と位置付けている。そうした米中の綱引きの焦点が台湾の半導体受託生産企業であるTSMCだ。最先端の半導体の生産技術を有し、米国のクアルコム、中国のファーウェイ双方から生産を受託している。このTSMCを巡っては、米中それぞれが自国に工場建設をさせて自陣に取り込もうと躍起になっていた。

 最近、米国に最先端工場を建設する予定であることが報じられた。今後、米国は前述の国防生産基金を活用して、半導体製造用の設備をTSMCに使用させることもあり得るだろう。

アビガンの原料も中国製、「医療の安全保障」も焦点に

 もう1つ注目すべきは医療分野が外交・安全保障の焦点になっていることだ。

 欧米各国では人工呼吸器など医療機器の供給拡大に向けた増産を異業種も含めた製造業全体の総力戦で取り組んでいる。マスクの確保のために必死に囲い込みも行われた。

 他方、中国は新型コロナの初期段階の対応に対する国際的な批判を避けて反転攻勢に出た。「健康の一帯一路」と称して、イタリアなどへの医療チームの派遣、マスク外交の背局的な展開をしていることは報道されているとおりだ。

 また3月、新華社の社説では「中国は医薬品を輸出規制することができる。そうすると米国は新型コロナウイルスの大海に沈むだろう」とあからさまな恫喝(どうかつ)のメッセージを発している。

 まさに今回の新型コロナで中国が米国に対して、レアアースとともに医薬品という2大武器を持っていると宣言したのだ。

 日本も他人事ではない。医薬品の原料になる原体は中国など海外に依存しており、さらに遡った出発原料はほとんどが中国で生産されている。特にペニシリンなどの重要な抗菌薬の原料が中国に依存していることに、危機感を持たなければならない。薬価が抑えられて、製薬会社が低価格の原料に依存する構造が定着してしまった。新型コロナの治療薬として注目されているアビガンについても、その原料は中国からの輸入に頼っている。今後増産しようとしているが、国内で原料生産することが重要だ。

 これまで医薬品や医療機器について中国依存のリスクを考えずに、低コストだけを追求してきた。新型コロナは「医療の安全保障」の重要性を気づかせた大きなきっかけと言える。今後、安全保障の視点での産業政策が医療の分野でも必要だ。