全3546文字
3月25日夜に記者会見する小池百合子・東京都知事(写真:つのだよしお/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響が深刻になっている。昨日(3月25日)夜には小池百合子・東京都知事が会見し、今週末の外出自粛を要請、「首都封鎖」のリスクも高まっている。だが、危機を乗り切るための経済対策が迷走している。

 経済対策として俎上(そじょう)に上っているのが、現金給付、商品券の給付、消費税の減税、キャッシュレス決済のポイント還元の拡充などだ。メディアでもこうした手段のメリット、デメリットをそれぞれ比較して、どれを選ぶべきかを論じている。「現金給付か消費税減税か」といった、メディア受けする議論の立て方自体が間違っている。揚げ句の果てには、「こうした危機のときには、できることは全てすべきだ」と一見もっともらしい、素人受けする議論まで飛び出している。しかし、これは政策論としてはいかにも雑ぱくだ。

 政策手段を選ぶにはまず、目的を明確にするのが鉄則である。ところが肝心の目的が混在して議論が混乱している。様々な対策案が議論されているが、全体像が見えづらいので、ここで整理したい。

今必要なのは「戦時の救済対策」

 新型コロナの封じ込め策で直接的な打撃を突然受けた企業や個人が、危機を生き延びることができるかの瀬戸際に来ている。今、必要な経済対策とは、突発的、一時的に発生した緊急事態に対処する、いわば「戦時の救済対策」である。

 中国から欧米に感染が拡大し、世界各地で入国制限や外出禁止が発動され、人の移動が止まってしまった。日本国内でも外国人旅行客の激減、イベントや外出自粛、サプライチェーン途絶など需要、供給両面で急激なショックが発生している。このままだと倒産と失業の山になりかねず、それを避けるための緊急経済対策は、時間との勝負で最優先すべきだ。

 他方、昨年秋の消費税の増税もあって景気後退の兆しが見えていた中、追い打ちをかけるように新型コロナの感染が拡大し、経済の状況は世界同時リセッションへと向かいつつある。そのため、経済全般の景気対策も必要になっている。

 もちろん、経済全般の景気対策のマグニチュードは大きい。だが、誤解を恐れずに言えば、これは「従来型の景気対策」だ。メディアは一律の現金給付か消費税の減税かという議論の立て方をするが、どちらも従来型の「一律バラマキ方式」の需要喚起策であり、今すぐ必要な緊急経済対策とは言えない。

 しばしばリーマン・ショックのときと対比され、当時行った一律の現金給付が持ち出される。しかしリーマン・ショックは金融システムの問題から実体経済に影響が及んだもので、必要なのは経済全般の景気対策だった。目的が違うものを持ち出すべきではない。「一律に現金給付をしても3割しか使われず、多くは貯金に回るだけ」との指摘もあるが、それ以前の問題だ。

 「戦時の救済対策」と「従来型の景気対策」を混同してはいけない。まずは戦時の経済対策が必要だ。

 ちなみに欧米各国も大型の財政出動をしようとしている。例えば、米国は2兆ドルに上る経済対策を議会で合意しようとしている。その内容を見ると、家計への現金給付のほか、打撃が甚大な産業(ホテル、レストラン、航空会社など)への資金支援、中小企業の資金繰り支援など、やはり戦時の経済対策に注力している。