地域ごとに必要な危機への備え

 そうした知事の意思決定に必要ないくつかのポイントを指摘したい。

 日本全国での感染流行の動態グラフが繰り返し報道されている。医療対応の限界を超えて医療崩壊にならないよう、感染のピークをずらすために対策が必要であることを示すものだ。大きな感染クラスターの形成は都道府県レベルの範囲で捉えられている現状を考えれば、このグラフを都道府県ごとに作って、地域での医療崩壊を起こさせないシナリオを早急に作らなければならない。

 感染症のリスクと経済活動のダメージの回避については、一方を追求するともう一方が犠牲になる「トレードオフ」の関係にある。そこで、どこまでのリスクを許容するかを見極めることが重要となる。

 新型コロナウイルスによる致死率は、季節性のインフルエンザが0.1%であるのに対して10倍の1%程度とも言われている。医療崩壊さえなければ、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)に比べれば圧倒的に低い。社会経済活動をどこまで犠牲にするかを判断するためには、このような致死率では、どれぐらいのリスクまでだと許容できるかの決断がいる。封じ込めを放棄するわけではないが、リスクゼロはあり得ないのだ。

 さらに地域の社会、経済活動へのダメージを最小にして感染拡大阻止の効果を最大にする方策は、それぞれの地域の実態に応じて異なって当然だ。地域の専門家、医師会、経済団体、国の出先機関などによる協議の場を設けて、具体的な措置の選択肢、優先順位などをあらかじめ議論しておく必要がある。これまで新型インフルエンザ対策で策定している行動計画も新型コロナの特性に応じて早急に見直すべきだ。地域の実情に関係なく、政府の策定する行動計画に「右へならえ」では情けない。

 また都道府県ごとだといっても広域連携も併せて必要だ。前述の和歌山県も県内のPCR検査体制では不足するので近隣の大阪府に検査を依頼して補っている。医療体制、検査体制の協力だけではない。人の移動制限、物資の調達なども県境を越えた対応も必要になってくる。

 こうした体制づくりは緊急事態宣言が出される事態になってからでは手遅れだ。あらかじめ備えておくべきだろう。また緊急事態宣言が出されなくても、知事が積極果敢に先手を打つことが必要だ。

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