米国が志向する「部分的な分離」戦略

 今、ワシントンでは「部分的な分離(Partial Disengagement)」がキーワードになっている。

 米中対立の激化で、世界が米国圏と中国圏に「分断(デカップリング)」されるのではないかとの懸念が広がっている。しかし経済全般の「分断」はもはや不可能で非現実的だ。グローバルな相互依存の経済構造が既に出来上がっているからだ。他方で、安全保障上の対中懸念の現実を考えれば、むしろ安全保障の視点で機微な分野を特定して、部分的に中国を分離していく。それが米国の志向する「部分的な分離」戦略だ。

 メディアは制裁関税の影響によるサプライチェーンの揺らぎにばかり注目しているようだ。しかし問題の本質はそこではない。

 制裁関税の発動によるコスト増が中国から他のアジア諸国に生産拠点を移管する動きを招き、サプライチェーン再編の波が押し寄せているのは事実だ。こうした現状でどう経営判断するかはもちろん極めて重要である。しかしトランプ大統領による制裁関税は自然災害同様、予測不可能だ。新型肺炎によるサプライチェーンの分断もそうだ。自動車産業を中心に世界経済に深刻な影響を与えているが、これも予測困難だ。そうしたリスクに対して企業はコスト増でもリスク分散して柔軟に対応できるように手を打つしかない。

 むしろ安全保障の観点での機微な分野での「部分的な分離」は着実に進展しつつある。しかも中長期的な視点でだ。

 日本企業も安全保障のアンテナを高くして、社内の事業分野ごとに仕分けをする作業が必要だ。そして、こうした特定分野における技術の観点で、サプライチェーンの分断を経営リスクと捉える必要があるだろう。

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