米中テクノ冷戦の主戦場・半導体

 先月、米中貿易交渉の第1段階の合意が署名されたが、こうしたトランプ大統領による関税合戦での取引は表層的なものだ。米議会を中心とする深層部分でのテクノ冷戦(技術覇権争い)はますます激しくなり、中国資本による米国企業への投資規制の強化に続いて、対中輸出管理も抜本的に強化しようとしている。その重要なターゲットの一つが半導体分野である。

 半導体は軍事産業の生産基盤となる技術である「基盤技術」の代表格とみなされている。米国の国防権限法においても安全保障上中核的な産業分野として半導体産業が特記されたことは要注意だ。

 一方、中国はそうした半導体産業を猛然と育成しようとしている。

 2018年4月、中国通信機器大手のZTEが米国の制裁発動によって、米国のインテルとクアルコムなどから半導体の供給を受けられなくなって、主力事業の停止に追い込まれ悲鳴を上げた苦い経験から、中国は半導体の内製化に一層アクセルを踏んだ。

 さらに同年10月、中国の国策半導体メーカー福建省晋華集成電路(JHICC)が米国の制裁発動によって半導体製造装置の輸出規制を受けて大打撃となったことに懲りたようだ。

 2014年からの第1期には2兆円の基金で半導体チップに投資し、2019年10月に発表した第2期計画では3.2兆円の基金で半導体製造装置に投資する。こうした資金力を武器に技術と人材の取り込みを加速している。高度な半導体人材を抱える台湾からは3000人を超える技術者が流出して歯止めがかからないという。

 今後も中長期で米中対立が続くことを前提に、中国は米国依存を脱却するために自前生産に躍起となっているのだ。

 これに対して、米国が半導体製造に関する技術流出に警戒するのも当然だ。そしてその製造装置は日欧企業が主たるプレーヤーであることから、その協力が不可欠としている。

 最近、半導体の性能を高める次世代装置(EUV露光装置)を独占的に供給しているオランダの装置メーカーASMLが中国政府系半導体メーカーSMICへの供給をストップしたのも米国の圧力があったからだといわれている。

 また台湾の半導体大手TSMCに対して、米中それぞれが圧力をかけて米国生産、中国生産をさせようと綱引きが過熱しているのもその象徴的出来事だ。TSMCに部材供給している日本企業もその余波を受けるだろう。

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