確かに7月当初そうした誤解を与える発言が政治家からあったのは事実だ。そのころ私はこう指摘している(参照:誤解だらけの「韓国に対する輸出規制発動」)。

 日本は措置の理由として輸出管理上の理由を2点説明している。

 「輸出管理の対話の不在」と「不適切事案の発生」だ。3点目に当時の世耕経産相が元徴用工問題での信頼関係が損なわれたことを付け加えた。ところがこれは措置の「理由」ではなく「背景」の1つで、不必要な部分だ。

 国内政治的には留飲を下げることになっても、国際的に誤解を与えることになりかねない。そこで日本政府もすぐに正確に説明するようにして、輸出管理上の「理由」だけしか指摘していない。日韓首脳会談での安倍首相の発言もそうしたことを踏まえたものだ。

 ところが韓国は不都合な2点の「理由」を意図的に無視していた。3点目の「背景」だけに焦点を当てて反発していた。

 ただし、先般の輸出管理の政策対話では輸出管理当局者同士の意思疎通が改善されつつあるのも事実である。問題は、その結果、この「理由」を正面から受け止めて韓国が対応するかどうかだ。

 それにもかかわらず一部メディアの受け止め方が相変わらず変わらないでいる。

 本質は、元徴用工問題の解決いかんに左右されず、輸出管理当局の判断で運用の意思が決定されるということだ。そうでなければ米国を含め国際社会の納得を得られないことは自明の理だ。だからこそこれは建前ではなく本音と言えるのだ。

これから輸出管理問題はどうなるのか

 当時、半導体関連の3品目の個別許可について「韓国の半導体産業に大打撃」などと報道が繰り返されていた。これは明らかに不安をあおり過ぎで、私は当時からこれは“空騒ぎ”だと指摘していた(参照:韓国の半導体産業、世界の供給網への影響も“空騒ぎ”)。

 実態が分かるのは時間の問題だった。最近、韓国政府でさえ「影響は限定的だ」と認める発表をしている。日本のゆがんだ報道が当初の韓国の過剰反応を助長させてしまったようだ。

 現在でも半導体生産に支障は生じていないが、今後、3品目の他のものについても、健全な取引が積み上がって信頼できる輸出企業に対しては手間を省くために同様の包括許可が認められるだろう。

 だが、いわゆるホワイト国からの除外の問題は別の問題だ。こちらはこれまでもコメントしているように、あくまでも韓国側の審査体制、法制度の対応次第で、実効的な審査であることが確認できるまでは時間はかかる(参照:日韓の輸出管理、やっと軌道に戻ったか?)。先般の政策対話はコミュニケーションがスタートしたことは一歩前進ではあるが、日韓の輸出管理当局者の説明は平行線であった。韓国の輸出管理に対する日本政府の評価は現時点ではこれまでと変わっていないのだ。時間はまだまだ要するようだ。

 そしていずれも「韓国に譲る、譲らない」という性格のものではない。これを誤解しているメディア、コメンテーターには厳しい目を向けるべきだろう。日韓関係にとって明らかにマイナスだからだ。

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