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 スマートフォンなどを対象とした米国による対中関税引き上げ「第4弾」が12月15日に発動されるか、市場の関心が高まっている。米中貿易交渉は駆け引きのヤマ場に来ているが、実は関税合戦は米中のせめぎ合いの表層にすぎない。深層部分には、米中の「技術覇権争い」があり、日本企業は早急な対応を迫られている。


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(写真:ロイター/アフロ)

 米中の貿易交渉は第1段階の合意がなされるか、駆け引きのヤマ場に来ている。12月15日に予定されている制裁関税の発動を延期するかどうか、トランプ米大統領の決断に市場の関心は集まっている。

 米国は当初、関税引き上げ「第4弾」を一斉に実施する予定だったが、9月1日と12月15日に分けて実施することになった。9月1日に家電や衣料品など1100億ドル分を対象に関税を15%上乗せしており、12月15日に残りのスマートフォンやノートパソコン、ゲーム機などの1600億ドル分について、制裁関税の対象になるかどうかが焦点となっている。

 関税引き上げが実施されれば、年末商戦に大きな打撃となり、米国の株価にもマイナスの影響が出て、トランプ大統領自身の首を絞めることになる。そのため、トランプ大統領は本音では発動を回避したがっているだろうと読まれている。来年の米大統領選を控え、農産物の大量輸入などの成果を焦るトランプ大統領の足元を見て、中国はこれまでの追加関税の撤廃も含めて、米国から取れるものは取ろうという駆け引きだ。

 いずれにしてもこうした第1段階の合意がどうなるかは、市場にとっては一大事だろう。しかし以前から指摘しているように、このようなトランプ大統領による関税合戦は、米中のせめぎ合いの表層部分にすぎない。

 深層部分とは“オール・ワシントン”(米議会などワシントンの政策コミュニティー)による、中国に対する技術覇権争いだ。最近はさらに人権問題も加わっている。

 背景にあるのは、戦後、欧米主導で築かれてきた価値観とは異質な国家資本主義の下、中国が軍民融合を国家戦略として技術獲得に乗り出していることだ。米国には、そうした中国に対して技術優位を失うと、安全保障上の重大リスクになるという認識がある。

 軍民融合は、民生分野でのハイテク技術と軍事技術の高度化を一体となって取り組むものだ。中国の産業政策「中国製造2025」においてもそれが柱になっている。そうした方針の下では、中国の民間企業に供与された民生技術でも常に軍事転用の危険にさらされる。

 さらにそのリスクを高めているのが国家情報法だ。民間企業も含むあらゆる主体が、中国政府の求めにより、得られた情報を政府に提供することが義務付けられている。これまで輸出企業が輸出管理を行う際、軍事用途でないことを確認するために「最終用途の誓約書」を輸出先の中国企業から得ることが一般的だった。しかし、もはやこれも気休めにすぎなくなる。従来の「軍事転用の可能性」だけに着目した国際的な輸出管理の枠組みは、時代に対応できなくなっているのだ。