■イベント開催のお知らせ■
2019年12月19日(木)19時、本コラムの著者、細川昌彦氏をゲストに招いたイベントを開催します。日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄延期、日米貿易協定の発効、米中貿易摩擦の長期化……。2020年、日本の通商を巡る環境が大きな変化にさらされます。そのとき、日本はどのような進路を進むべきか。これまでの交渉の舞台裏を振り返りながら、激動の世界経済を生き抜くヒントを探ります。
※このイベントは有料会員限定です

今回の日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を巡る騒動は韓国の“独り相撲”だった。自ら墓穴を掘っただけで、「日本の完勝」と喜ぶのも適当とは言えないほどだ。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権はここまでの米国の本気の圧力を想定しておらず、そして日本はそのうち折れてくるだろうと、日本の姿勢も読み違えた。当初、韓国は日本の輸出管理厳格化の措置への対抗措置としてGSOMIA破棄のカードを出してきた。そうすれば、米国はGSOMIA破棄を回避するために韓国だけでなく日本に対しても働きかけ、日本が輸出管理厳格化の措置を撤回するように追い込めると期待していたようだ。そのためには、GSOMIAと輸出管理厳格化という2つの問題を何としてでもリンクさせることが必要だった。
日本側もそこがポイントであることは百も承知で、両問題が別次元で全く無関係であることを徹底的に説明し続けた。結局、米国は韓国が期待する「喧嘩(けんか)両成敗」で調停する動きをせず、韓国のもくろみは外れた。
それどころか、米国はGSOMIAの失効が米国の安全保障を直接的に脅かすものだと受け止めて、米国の韓国への圧力は失効期限が迫るにつれて日に日に激しさを増していった。背景にあったのは対北朝鮮というよりは、対中国である。米議会の対中脅威論も拍車がかかり、GSOMIA継続について米議会上院が全会一致で可決する事態にまで発展した。さらにそこに、米国は在韓米軍の駐留経費の韓国負担を約5倍に増額するという圧力もかけた。
文政権は追い込まれ、GSOMIAを続けざるを得なくなった。あとは国内からの「無能な外交」との批判を避けるために、国内向けにどうメンツを保つかに腐心した。ポイントは韓国がGSOMIAの失効を回避するという方針転換と同時に、日本にも輸出管理で譲歩させたと国内向けに強弁できる状況をつくることだ。
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