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10月7日、日米貿易協定に正式署名した。前列左から杉山晋輔・駐米大使、ライトハイザー・米通商代表部(USTR)代表、トランプ米大統領(写真:ロイター/アフロ)

 日米貿易協定が10月24日から国会審議に入った。最大の焦点は、私が当初から指摘してきたように米国の自動車・自動車部品関税となっている。しかし大事なことは、「事実に基づく政策論議」だ。これが今の日本に欠けている。国内でしか通用しない、都合のいい解釈論とは仕分けすべきだ。

 重視すべきこの協定の自動車関税に関する「事実」とは、以下の2点である。

 (1)日米両国で署名された文書にどう書かれているか
 (2)相手国である米国側がどう対外説明しているか

 (1)については、すでに指摘したように(関連記事:日米貿易協定から「自由貿易」が消えた!)、 「自動車・自動車部品関税の撤廃に関して更に交渉する」としか書かれていない(日米貿易協定の原文=、119ページを参照)。これを「さらなる交渉による関税撤廃」と意訳して発表したり、「将来における関税撤廃を約束した」と解釈したりしている。これは、明らかに事実から逸脱している。

 (2)については、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表が9月25日の記者会見で「自動車・自動車部品はこの協定に含まれていない」と2度も明確に説明している。そしてこれはホワイトハウスが公表している。日本のメディアはなぜかこれに触れていない。もしもこのライトハイザー発言が日本政府の見解と相違があるならば重大な問題である。即座に米国政府に反論していなければならないが、今のところ反論した形跡はない。

 こうした「事実」を直視すると、自動車・自動車部品関税の撤廃を米国が約束したような「強弁の解釈」は国内向けと言わざるを得ない。

 大事なことはこうした言い逃れに終始するのではなく、「事実」を前提に、それでもこの協定を結ぶべきだという堂々とした政策論での説明だ。