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超党派の議員から「トランプ発言」への批判が噴出

 ファーウェイはツイッターで、「トランプ氏はファーウェイに米国のテクノロジーを購入することを再び許可すると示唆した」と発信し、自社の都合のいいように受け止めている。だが、果たしてどうだろうか。

 昨年春、米国が中国の大手通信機器メーカー・中興通訊(ZTE)への制裁を解除した時は、ZTEは罰金支払いや経営陣の入れ替えに応じた。ファーウェイに対しても禁輸措置の解除に向けて何らかの条件を付けるべく、今後協議が行われるかのような報道もあるが、これもなかなか難しいだろう。

 米ワシントンではこうしたトランプ氏の発言に対して早速、民主党のシューマー上院院内総務や共和党のルビオ上院議員が厳しく批判している。「ファーウェイの問題は安全保障の問題で、貿易交渉で交渉材料にすべきではない」というのが、米国議会の超党派の考えだ。

 昨年春、トランプ大統領が習主席からの要求に応じてZTEの制裁を取引で解除したことは、彼らにとって苦々しい経験となっている。大統領選に立候補を表明しているルビオ上院議員にいたっては、大統領が議会の承諾がないまま、勝手に貿易交渉で安全保障の観点での制裁を解除できないようにする法案まで提出している。

 仮に今後、ZTEのようなパターンになりそうならば、トランプ大統領は選挙戦において共和党からも民主党からも厳しい批判にさらされることは容易に想像できる。

 果たしてファーウェイへの制裁がどういう方向に行くのか、大統領選も絡んでもう少し見極める必要があるようだ。

トランプvs“オール・ワシントン”の綱引き

 私はトランプ政権を見るとき、トランプ大統領とトランプ大統領以外の“オール・ワシントン”を分けて考えるべきだ、と当初より指摘してきた(関連記事:米中の駆け引きの真相は“トランプvsライトハイザー” 、以降、“オール・アメリカ”よりも“オール・ワシントン”の方が適切なので、表現を改める)。“オール・ワシントン”とは議会、政権幹部、シンクタンク、諜報機関、捜査機関などのワシントンの政策コミュニティーである。

 トランプ大統領自身は関税合戦によるディール(取引)に執着している。今や2020年の大統領再選への選挙戦略が彼の頭のほとんどを占めていると言っていい。すべてはこの選挙戦にプラスかマイナスかという、いたって分かりやすいモノサシだ。中国に対して強硬に出る方が支持層にアピールできる。民主党の対抗馬からの弱腰批判も避けられると思えば、そうする。追加関税の引き上げが国内景気の足を引っ張り、株価が下がると思えば、思いとどまる。株価こそ選挙戦を大きく左右するとの判断だ。

 他方、後者の“オール・ワシントン”の対中警戒感は根深く、トランプ政権以前のオバマ政権末期からの筋金入りだ。ファーウェイに対する安全保障上の懸念も2000年代後半から強まり、この懸念から2010年には議会の報告書も出されている。米国の技術覇権を揺るがし、安全保障にも影響するとの危機感がペンス副大統領による“新冷戦”宣言ともいうべき演説やファーウェイに対する制裁といった動きになっていった。

 この2つはある時は共振し、ある時はぶつかり合う。

 昨年12月、ブエノスアイレスでの米中首脳会談の最中に、ファーウェイの副社長がカナダで逮捕された件はこれを象徴する。トランプ大統領は事前に知らされなかったことを激怒したが、捜査機関にしてみれば、トランプ大統領に習主席との取引に使われかねないことを警戒しての自然な成り行きだ。

 そして5月15日には米国商務省によるファーウェイに対する事実上の輸出禁止の制裁も発動された。これはこの貿易交渉決裂の機会を待っていた“オール・ワシントン”主導によるものだ。

 実はファーウェイに対する事実上の輸出禁止の制裁は2月ごろから米国政府内では内々に準備されていた。それまでのファーウェイ製品を「買わない」「使わない」から、ファーウェイに「売らない」「作らせない」とするものだ。ファーウェイもこの動きを察知して、制裁発動された場合に備えて、日本など調達先企業に働きかけるなど、守り固めに奔走していた。しかし次第に貿易交渉が妥結するとの楽観論が広がる中で、発動を見合わせざるを得なかったのだ。そうした中、この切り札を切るタイミングが貿易交渉決裂でやっと到来したのだ。