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ポスト大阪サミットは”影の議長国”で

 こうして見てくると、日本の今後の通商分野での国際的な役割が明らかになってくる。

 米中貿易戦争で国際的な経済秩序が揺らいでいる中、日本の生命線であるルール・ベースの国際秩序を維持していくうえで必要なことは何か。

 まず多国間の国際的枠組みで具体的な分野ごとにルールを提案していく能力が必要だ。実はそれができる力量のある国はごくごく限られている。

 

 そしてそれを多国間の合意にまで持っていくノウハウ、経験も必要である。声だけ大きくても各国はついてこない。相手国から「誠実な調整役」と評価されていることが不可欠だ。この点で米国抜きの環太平洋経済連携協定(TPP11)を合意に持ち込んだ日本の通商外交の実績が他国から多大な評価を受けていることは大きな財産だ。

 米中、米欧が激しく対立する中、多国間の合意はかつてないほど至難の業になっている。昨年のパプアニューギニアでのAPEC、アルゼンチンでのG20を見れば明らかだ。議長国に力量がないと、勢い対立を回避して各国が合意できる最大公約数を取り、むなしい抽象論が並ぶだけの結果になってしまう。

 「日本は米中欧の橋渡し役を」と言う評論家は多い。もちろんその通りだ。しかし言葉で言うのは簡単だが、交渉の現場はそんな生易しいものではない。

 議長国として各大国と直談判をして、それぞれの身勝手な主張を押し込むことができるかが勝負だ。特に日本が米国を説得できるかを各国は注視している。「そこまで日本が米国を押し込んだのなら仕方ない」と思わせられるかどうかだ。

 しかし、いつも日本が議長国であるわけではない。今後の多国間外交の課題は、日本が議長国をどう支えられるかだ。「誠実な調整役」という国際的な評価を背負って、事実上、“影の議長国”として調整に奔走することが、これからの日本のあり方なのだろう。しかも目先の会議だけではなく、時間をかけた多国間のプロセスの一環として捉える“時間軸”が大事になってくる。今回のG20サミットも合意の文言ばかりに終始せず、「日本は今後の国際秩序にどう向き合うべきか」という目で見ていきたいものだ。