
いよいよ20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)が今週、日本主催で開催される。耳目を集めているのは本体の多国間の会議ではなく、この機会に来日する各国首脳同士の2国間外交だ。
とりわけ今回はトランプ米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席による米中首脳会談だ。習主席による北朝鮮訪問、米国による中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)に続くスーパーコンピューター企業への制裁など、事前に繰り広げられるドラマチックな両者の駆け引きでますます盛り上がっている。
もちろん米中貿易戦争が世界経済に与えるインパクトの大きさは計り知れないが、他にも見失ってはならないことがある。今回のG20サミットそのものが持つ本質的な意味の大きさだ。それが今後の多国間の国際秩序の行方を左右する。
文言の綱引きよりも「時間軸を持った目」を
近年のG20やAPEC(アジア太平洋経済協力会議)などの多国間の会議を見ていると、首脳宣言に特定のキーワードを「入れる/入れない」という綱引きに終始しているようだ。メディアもそれにしか目が行かず、会議の成果もそれで評価している。
具体的には、米国をけん制するために定番の「反保護主義」の文言が入ったかどうか、中国をけん制するために「不公正な貿易慣行の是正」という文言が入ったかどうかだ。そして米中はともに孤立してでも、こうした文言を拒否する、という構図である。
これらの文言にけん制効果がないわけではなく、その重要性を否定するつもりはない。私自身、現役の役人として交渉に携わっていた時には、多国間の会合でこうした文言を巡る各国との綱引きに血道を上げて、勝った負けたで一喜一憂していたものだ。しかし、正直言えば、それによって大国の行動が現実に変わることはほとんど期待できない。
大事なことは、こうした一般論、観念論の文言ではない。いかに具体的な内容を書き込んで、会議後の国際的かつ具体的な動きにつなげていけるかだ。本来は、そうしたプロセスのきっかけを作れるかどうかで会議の成果を見るべきである。そのためには1回の会議だけを切り取って見ていても、何の意味もない。「時間軸を持った目」で、交渉を見るべきだ。
それでは、そうした視点で今回のG20サミットの通商分野の交渉の焦点を見てみよう。
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