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複雑な要素が絡み合う駆け引きが続く

 2010年以降、米中双方で、レアアースを巡る動きは活発であった。

 中国は2010年の経験から、その後、日本の磁石メーカーの一部から技術移転を得て、中国自身、磁石生産もある程度できるようになって、交渉力は当時よりは強くなっている。

 米国も2010年の中国による供給途絶を受けて、国防上の重要問題とし取り上げられ、国防備蓄も含めてサプライチェーンを確保するための法案が成立している。2018年8月、投資規制、輸出管理など多面的な対中戦略を規定した2019年度国防権限法においても、国防総省が中国からレアアース磁石を購入することを禁止している。それとともに国内のレアアース生産への経済支援を与える法案も可決している。

 仮に中国による米国への供給途絶があった場合、どうだろうか。

 日本の磁石メーカーも米国への供給に制約がかかるだろう。他方、磁石メーカーにおける備蓄もある程度あるので、しばらくはしのげるかもしれない。ジスプロシウムを使わない磁石の開発もある程度進展している。しかしそれがどの程度実用可能か不透明だ。

 2010年からの輸出規制に対しては、日米欧は世界貿易機関(WTO)に提訴して、2014年に中国は敗訴している。それにもかかわらずまた輸出規制を発動すれば、国際的に孤立を招きかねないリスクも計算に入れなければならない。

 こうしたさまざまな要素を織り交ぜた米中の駆け引きがまさに行われている。日本の報道にあるような単純な「切り札」ではないのだ。恐らく主要20カ国・地域(G20)大阪会合まではこうした計算が行われ、仮に中国側の動きがあるとすれば、G20後の可能性が高いのではないだろうか。

 従って、安倍総理がG20および日中首脳会談でこの問題にどう対処していくかが極めて重要になってくる。