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トランプ大統領はファーウェイで“取引”するのか?

 一方、トランプ大統領がファーウェイへの制裁も中国との取引の対象になり得ると言及して波紋を呼んだ。恐らく市場への安心材料として株価対策の面もあるのだろう。

 トランプ大統領には昨年、中国通信大手ZTEへの制裁を習近平主席との取引に利用し成果を上げた成功体験がある。だが、ファーウェイ問題の根深さを見誤ってはいけない。

 昨年8月の記事「米中は『貿易戦争』から『経済冷戦』へ」でも指摘したが、トランプ大統領と「オール・アメリカ」を分けて考えるべきだ。

 「オール・アメリカ」とはワシントンの政策コミュニティーを形成する、米国議会、シンクタンク、諜報機関、捜査機関、などを指す。中長期的な視点で対中警戒感を強め、昨年10月のペンス副大統領の“新冷戦”宣言ともいうべき対中演説がその代表例だ。ファーウェイへの警戒感の震源地でもある。

 他方トランプ大統領は自らの選挙戦にしか関心がなく、取引による短期の成果を求めている。彼にとってファーウェイ問題も取引材料の一つにすぎない。それをさせないのが「オール・アメリカ」の考えていることだ。オール・アメリカにとっては昨年、トランプ大統領がZTEを取引の材料にされたことは、「悔しい汚点」なのだ。そのため今回は、議会共和党主流も含めて黙っておらず、トランプ大統領に取引をさせないだろう。

 「オール・アメリカ」のシナリオは明確だ。

 懸念ある中国企業に対しては次の3段階で締め出そうとしている。

  • 第1段階:米国の政府調達から排除する。米国政府が「買わない」「使わない」
  • 第2段階:米国の民間企業に「買わせない」「使わせない」
  • 第3段階:部材を「売らない」、製品を「作らせない」

 ファーウェイについては、昨年8月に第1段階、そして今回は第2、第3段階に突入した。ファーウェイ以外についても、監視カメラの中国企業ハイクビジョンや人工知能(AI)企業など数社が今後、第1段階から第2、第3段階への移行対象として名前が挙がっている。先般、米国土安全保障省が、中国製ドローンが収集した映像データに中国当局がアクセスする可能性がある、と警告した。ドローンのトップ中国企業DJIも、第1段階の対象になる候補として名前が挙がっている。

 こうした一連の動きはトランプ大統領に関係なく、ワシントンの「オール・アメリカ」として根深い動きであるため、トランプ大統領による関税合戦の取引とは一線を画して考えるべきだ。