全5459文字

為替条項は徹底抗戦か? 内容次第か?

 通貨安誘導を防ぐための為替条項については、日米の財務大臣どうしでの話し合いでということになったようだ。これは財務省の意向を受けてのことだ。ムニューシン米財務長官は、日本との交渉では為替条項を求める考えを明らかにした。米国は先般、メキシコとカナダとの間で締結した「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」において、為替条項を導入しているが、これが念頭にある。

 日本は2011年以来、円売り介入をしていないが、金融緩和も円安誘導と捉えられて金融政策の自由度が狭まるとの懸念も指摘されている。本当にそうだろうか。

 この為替条項の中身を見ると、競争的な通貨切り下げを禁止し、ある国が相手国に通貨安誘導の疑いがあると判断した場合、まず両国で協議を行い、もし解決に至らない場合は、国際通貨基金(IMF)に調査を依頼する。つまり、通貨安誘導の疑いが生じただけで、直ちに制裁関税が発動されるというような、強制力のある内容にはなっていない。

 実はIMF協定では、「為替の安定を促進し、加盟国間の秩序ある為替取引を維持し、競争的な通貨切り下げを回避すること」が規定されている。そのため、多くの専門家の間では、USMCAにおける為替条項は、基本的にはこのIMF協定の範囲内と受け止められている。仮に日米交渉において為替条項が導入されても、USMCAの為替条項と同程度のものであれば、日本にとってどこまで脅威なのか内容を突っ込んで見る必要があるようだ。

 そもそも日本の通貨当局は伝統的に、「為替問題への対応は通貨当局間が話し合うもの」という原理原則を堅守し、これまでも徹頭徹尾、通商交渉とは切り離すことに腐心してきた。いわば、神聖な「通貨」の世界に「通商」という汚らわしいものを持ち込ませない、というものだ。この原理原則が崩されようとしているだけに、抵抗は相当なものだ。

 今回、財務大臣同士という場に引き戻したので、取りあえずホッとしているだろう。しかし、これで終わったわけではない。実害があるかどうかは中身次第という姿勢に転換する必要がいずれ出てくるのではないだろうか。

夏の参議院選挙後が当面のターゲットか

 まずは順調にスタートを切った今回の会談だ。今後は日米に国内政治日程が大事になってくる。

 米国は秋からは事実上大統領選モードになる。トランプ大統領としてはそこに向けた成果が必要になる。他方、日本は7月に参議院選挙がある。それまでは農産物の関税引き下げやFTA論でガタガタさせたくない。

 恐らく7月の参議院選挙後に一つの節目を迎えるだろう。