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“つまみ食い”“いいとこ取り”ができない

 今回の会談での明確になった重要なポイントがある。茂木大臣はこう語っている。

 「貿易協定というものは、個別に決めるのではなくて、パッケージ合意ですから、全体が決まって合意になるわけでありまして、ここだけ決まりましたよと、これが合意ですというやり方は交渉ではとらない。これが交渉では一般的だと思います」「win-winとなるような交渉を進めたい」

 実はこれが非常に意味を持っている。

 交渉の本質は、サービスを含むかどうかではない。物品だけであっても、国際ルールに従った交渉にしなければならない。ポイントは2点ある。

 第1に、特定国への関税引き下げは、「実質的にすべての貿易」について関税撤廃するものでなければできない。それが世界貿易機関(WTO)協定上のルールだ。米国に対して日本の農産物だけ関税引き下げするといった“つまみ食い”は許されないのだ。

 第2に、関税交渉はギブ・アンド・テークだということだ。一方的に米国の要求だけを交渉するのではなく、日本も米国に対して要求して双方向の交渉でなければならない。茂木大臣の言うところの「win-win」はギブ・アンド・テイクと言い換えてもいい。

 かつてTPP交渉でも関税引き下げについては2国間での交渉の集積だが、日米間では、日本の農産物の引き下げと米国の自動車関税の引き下げがパッケージで合意されたことを忘れてはならない。これは当時、甘利大臣(当時)が難交渉の末、妥結した成果である。従って日本の農産物の関税引き下げだけの“いいとこ取り”はあり得ないのだ。

 米国も日本に対して相応の対価を差し出さなければならない。

 まず交渉の入り口でこうした国際的に当たり前の原則・ルールを明確にしておくことは当然で、茂木大臣も交渉者として当然すべきことをしたのだろう。