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 中国にとってこうしたトランプ大統領はくみしやすい相手なのだ。この点も北朝鮮と同じだ。

 ただし、先般の米朝首脳会談でトランプ大統領が合意せずに決裂したことは想定外であって、中国をより慎重にさせている。

 他方、オール・アメリカにとっては、トランプ大統領が米国産の大量購入といった短期的な成果で妥協することを何としても避けたい。中長期的な中国への警戒感から、中国の構造問題をじっくりと追い詰めたいのだ。いわゆる「ビッグ・ディール」を追求する。

 そこで議会は公聴会など、さまざまな方法で政権への圧力をかけようとする。根っからの対中強硬のライトハイザー氏としては、政権内ではトランプ大統領に刃向かえない閣僚であるが、この対中強硬の議会の圧力を利用して、トランプ大統領を何とかコントロールしようとしている。

 中国との安易な妥協は対中強硬の議会から格好の攻撃材料を与えるとのメッセージだ。ライトハイザー氏は80年代から議会との関係に腐心してきた人物だけに、ツボを押さえた動きともいえる。「ワシントン・サバイバー(ワシントンの政治の荒波の中で生き残っていく人間)」の面目躍如だ。果たしてこの綱引きがどう展開するかが、米中交渉の行方を大きく左右する。

米朝交渉と二重写しになる、ワシントンの政治力学

 こうしたライトハイザー氏の政治手法は、米朝交渉におけるボルトン大統領補佐官やポンペオ国務長官らにも共通するものだ。北朝鮮の非核化を曖昧にしたままで、米朝首脳会談に前のめりになり、安易な合意をしかねないトランプ大統領に対して、どうコントロールしていくか。

 政権内では独裁のトランプ大統領に刃向かえない中で、諜報機関による北朝鮮の核開発情報が安易な合意を避ける決定打となった。こうした諜報機関も議会と同様、前述した「オール・アメリカ」の主要プレーヤーの一つだ。これをどう活用するかがポイントとなる。

 ファーウェイ問題にもこうしたトランプvsオール・アメリカの構図が読み取れる。ファーウェイは議会、捜査機関といったオール・アメリカの対中警戒の対象に“ロックオン”された。しかしトランプ大統領はファーウェイ問題も中国との貿易交渉の取引材料に使いたいようで、オール・アメリカにとってはかく乱要因と捉えられている。詳細は前稿で指摘した通りである。

 

 米中交渉の行方も米中間の駆け引きだけでなく、こうしたワシントンの政治力学での綱引きを注視する必要がある。これから日米通商交渉に臨む日本も、頭に置いておくべきポイントだ。

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