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ファーウェイを巡る激しい情報戦

 今、ファーウェイを巡っては、激しい情報戦が繰り広げられている。そういう中で、バランス良く受け止めることがますます難しくなっていることも事実だ。そこで、最後にいくつかの点を付言しておきたい。

 英国の情報機関の一つである国家サイバーセキュリティセンターが「リスクは管理可能」との判断を固めたと報じられた。しかしこれをもって「英国が米国主導の包囲網から一定の距離を置く結論を出した」とするのは早計だ。英国政権内では未だ見解が割れている。

 「国家が方針として特定の民間企業の製品を排除する決断を下すには、証拠に基づかなければならない」という指摘も基本的にはその通りだが、情報の抜き取りを検証することは不可能に近い。むしろ米国が問題にする本質はそこではない。

 米国が警戒感を露わにしているのは、ファーウェイも共産党政権の統治の“くびき”から逃れられないという事実だろう。いくらファーウェイのCEO(最高経営責任者)が「顧客の利益を損なうような情報提供は行わない」と公言しても、あらゆる組織、個人は国家からの要請で情報を提供する義務が規定されている国家情報法に反することはできない。これが米国の懸念の背景にあることは忘れてはならない。

 また「なぜファーウェイだけなのか」についても、疑問を呈する向きもある。しかしファーウェイは安全保障に直結する通信インフラを支える機器を国内、海外に供給する欧米大手を追い抜く。習近平政権にとって、ハイテク技術の軍民融合を目指す国家戦略「中国製造2025」は共産党政権を支える生命線で、ファーウェイは民営企業であっても、今やその象徴的存在になっている、と米国は見ている(この点は、共産党政権の意図が当初からそうであったかは定かではない)。国有企業であるZTEなど他の中国メーカーとは比較にならない突出した存在だ。

 こうした表面的な貿易協議のドラマ仕立ての展開とファーウェイを巡るさまざまな情報戦にばかり目を奪われていてはいけない。私が常々指摘してきている「トランプ以外のオールアメリカ」の世界では、水面下で着実に事態は動いていることを見逃してはならない。日本企業も経営リスクとしてそれへの備えが急務になっている。