全3416文字

 米国・商務次官補の来日が意味するもの

 こうした米中協議の表に現れた部分とは別に、隠れた主役が中国通信大手ファーウェイだ。

 米中協議の最中、ペンス副大統領やポンペオ国務長官が東欧を訪問してファーウェイ排除の包囲網を目指す動きが伝えられている。米国は今後、行政機関の調達だけでなく、米国企業による使用を禁ずる大統領令を検討しているとの報道もある。いずれもメディアの目は、ファーウェイ製品の「調達からの排除」を巡る綱引きにばかり目が行っている。

 しかし同時に、ファーウェイについては、これから先のもっと深刻な動きの準備が水面下で着々と進められているようだ。メディアの目はまだそこには向いていない。

 25日、米国商務省の輸出管理担当の次官補が来日して、日本企業など200人が参加するセミナーが開催された。表向き、最近の中国に対する米国の輸出管理の動きを説明するもので、日本企業への警鐘を鳴らす目的でもある。

 しかし狙いはセミナー自体にはない。米国の商務省次官補がそれだけの目的で来日するわけがないからだ。私もかつて経産省でこのポストのカウンターパートであった経験から容易に推測できるが、当然日本政府との協議が本来の目的だろう。

 これは前稿「米国は中国ファーウェイのサプライチェーン途絶に動く」で、先月の司法省によるファーウェイに対する起訴についての記者会見から読み解いたメッセージに符合する。

 前稿で指摘したように、米国は明らかにファーウェイに対して、「調達から排除する」という段階から「部材の供給を遮断する」の段階に行く準備をしている。「買わない」「使わない」から「売らない」「作らせない」へ、である。そこで商務省管轄の輸出管理の出番となる。

 具体的には、輸出管理の「懸念顧客リスト」(いわゆるブラックリスト)の対象にする。その結果、ファーウェイに対して、米国は原則禁輸の運用になるのだ。昨年の中国通信機器メーカー・ZTEや中国半導体メーカー・JHICCに対する措置と同じだ。これらは前哨戦で、ファーウェイが本丸なのだ。

 その際、米国にとって大事なのは、日本、欧州といった同盟国の協力だ。部材の供給能力のある日本、欧州による対中国の輸出管理の運用に関心が向いて当然である。

 他方、ファーウェイも明らかに司法省会見に見られる米国の意図を読み取って、危機感を持って米国以外からの部材の調達先の確保に奔走しているようだ。ファーウェイは日本の部材メーカーにとっても重要顧客であるだけに、難しい対応を迫られることになる。少なくとも米国から「漁夫の利」を得ようとしたと見られることのないよう慎重さが必要になっている。

 そうしたファーウェイを巡る米中のせめぎ合いも当然、米中貿易協議に絡んでくる。トランプ大統領はファーウェイ問題を取引材料に使いたいだろう。案の定、早速ツイッターでもそれを匂わせている。前稿で「かく乱要因はトランプ大統領だ」と指摘した通りの展開だ。

 トランプ大統領にとっては、昨年ZTEが米国の懸念顧客リストに載せられて、半導体の入手ができなくなったことから習近平主席に泣きつかれたことが成功体験になっている。これで味をしめたのだ。ZTEの比でないファーウェイ問題は、習近平主席を首脳会談に誘い出す格好の材料と見ていてもおかしくない。習近平主席にとっても、ファーウェイに恩を売って今後の影響力を高めるいいチャンスだろう。